Information Systems Workshop

This was held as part of the GCL lecture ‘Information Systems,’ in the summer semester of the 2014 academic year. On July 17, 2014, the first session of the workshop was held for about one hour and two teams were formed. Afterwards, each team made plans, defined the requirements, wrote an external design document, and finally submitted a request for proposal (RFP) of their information system. Each team had meetings in addition to the classes and undertook investigations, held discussions, and documented their work. The final symposium for presenting their activities was held as a request for proposal competition on August 3, 2014.

企画の背景

情報システム論ワークショップは、GCL講義「情報システム論」(2014年度は夏学期に開講)に付随したワークショップ(GWDS A Large)として開催された。2014年7月17日にワークショップの初回を開催し、2つのチームが編成された。以後、各チームは情報システムの企画・要件定義・外部設計を行い、最終的に提案書(Request For Proposal)を提出した。各チームは、授業以外にも集まり、調査・議論・文書作成等を行った。活動の結果を報告する発表会は、提案書の審査会(コンペ)として、2014年8月3日に行われた。

どんなワークショップ?

グループ単位で情報システム調達の企画を検討し、そのシステムの提案要求および調達仕様書を作成するプロセスの実践およびその反省を通じて、情報システムの仕様書を作成する能力を身につけることを目的とした。2チームの調達の主旨は、下記のとおり。

Aチーム:現行のシステムにおいて、月経随伴症状に悩む女性のメンタルヘルス・サポート機能を追加することである。この機能拡張により、月経周辺期における女性のメンタルヘルス向上に寄与し、女性のQOL向上を目指す。また、この機能拡張によって、アプリケショーションのユーザー数の年齢層拡大を目指した。

Bチーム:鉄道路線の利用者の混雑を避けて移動したいというニーズを満たすためとして、スマートフォン向けアプリ「NAVITIME」の既存の乗換検索機能に、客観的な混雑状況データをもとに混雑を回避できるルートを提示する機能を追加することを目指した。

プログラム

7.1

チーム編成(A、Bの2チーム)、初回打ち合わせ

Aチーム
7.17

ミーティング(テーマの絞込み、大枠の決定、宿題の決定)

7.18〜27

専門分野でコミットできる情報、および有用な情報の共有

7.28

ミーティング(仕様の認識のすり合わせ、役割分担など)

7.29〜8.1

残作業、資料の相互チェック、サービスのブラッシュアップ

8.3

残作業、資料の相互チェック、サービスのブラッシュアップ

Bチーム
7.17

ミーティング(システム企画に関する「導入分野と課題概要」の決定)

7.18〜24

調査、および調査結果の共有。企画の詳細について協議、決定

7.25〜28

プレヒアリングに向けて資料を準備

7.28

指導教員による成果のプレヒアリング

7.29〜8.1

プレヒアリングの指摘を受けた追加資料の作成、既存資料の修正。プレゼンテーション資料の作成

8.3

プレゼンテーション

ワークショップの成果

Aチーム:具体的な成果物として、「包括的自己月経周期管理システム」に関する、調達仕様書、プロポーザル技術提案仕様書、プレゼンテーション資料、プロジェクト報告書が出来上がった。これらをもとに発注を行い、発注先と具体的なやり取りを行えば、本システムの開発・導入ができるものと考えられる。

本プロジェクトは、現行存在する大手自己月経周期管理システムである「ルナルナ」の機能拡張を想定したものである。具体的には、1)基礎体温のアプリへの手入力の煩雑さの解消、2)ストレス測定後のリアルタイムでのコメント表示が可能となる。現行のルナルナでは、基礎体温は毎日の定点測定結果を手入力しなければならず煩雑であった。また、ルナルナによりユーザーが得られる情報は、主に「いつが妊娠しやすいか」など妊活に役立つ次回生理日予測という側面に偏っており、PMS(月経前症候群)そのものの情報提供やその苦痛から解放してくれるものではなかった。これらのことがユーザーの定着や新規ユーザーの開拓の障がいになっていた。今回の提案では、例えばウェアラブル端末などを活用して、ユーザーの基礎体温やストレスの度合いは自動的にアプリに同期することによって、それをもとに精神的なサポートや具体的対処方法などを示唆するコメントをリアルタイムで得られるようになる。結果、ユーザーの定着と妊活世代以外の新規ユーザーの開拓に同時に資することが可能なのではないかと考えられる。

Bチーム:現状分析に基づく、適切な目的設定:企画概要を決定した際は、混雑緩和を目的として混雑状況をリアルタイムで情報提供するシステムを想定していた。しかし、その後の調査・グループ協議の結果、特に通勤ラッシュ時の混雑を考慮すると、混雑緩和に向けては、ハードウェア面(プラットホーム、車両)のキャパシティの向上、あるいは、フレックスタイム制の導入等によるピーク時の乗客数の緩和、といった施策の方が有効であり、システム導入がもたらす効果は比較的小さいと推測されることが判明した。これに伴い、システム調達の目的を、「混雑緩和」から「利用者の利便性の向上」に修正し、その目的に照らして、調達する機能を検討、絞り込みを行った。このように、現状の分析に基づいて適切な目的を設定した上で、その目的に適合した機能を検討する、という順序で検討をしたことにより、一貫性のある調達仕様書を作成することができた。

現行のシステム(アプリ)からの改修内容と、それのもたらす意義(効果)の明確化:企画テーマを決定した時点では、調達の対象を、現行の「NAVITIME」の乗換検索機能に、混雑率による検索フィルタ機能および混雑情報のリアルタイム表示機能の追加、および、駅構内案内機能の追加をすることを想定していた。しかし、その後に現行の乗換検索機能を調査した結果、混雑情報を表示する仕組み(「こみれぽ」アプリとの連携)と、駅構内案内を表示する仕組みが既に実装されていることが判明した。これに伴い、システム改修内容を、1)(「こみれぽ」のようなユーザーからの主観的情報ではなく)客観的な混雑状況データの収集とその表示をする機能と、2)混雑率による検索フィルタ機能の追加、とした。このように、現行のシステムの機能を調査・分析することで、改修内容とそれのもたらす意義・効果(客観的なデータに基づく混雑情報表示による、利用者からの信頼度向上、および、混雑を回避できるルートを検索できることによる利用者の利便性の向上)を明確化することができた。

ふり返り

Aチーム:本プロジェクトは、メンバーの1人の発案から始まっており、第1回ミーティングの段階で、仕様書作成までの道筋がついていた。当初から1人の頭のなかにしっかりと完成形のアイデアがあっただけに、その構想をみんなに広げていく特有の情報共有・意見統一の難しさがあった。つまり、必然的に発案者がリーダーシップをとらざるを得ず、業務が集中する傾向があることが課題であったと思われる。例えば、当初はプロジェクトを進めるにあたって、車輪のハブのように中心に発案者がいる1対1のコミュニケーションが主となったため、システム上の疑問が生じると発案者を頼らざるを得なかった。しかしながら、システム上の議論が成熟してくると、1人1人の裁量で作業を進めることが可能となり、逐次発案者に確認をとることはなくなり、全員で仕様の確認を行えるようになった。また、担当分の作業が終わった者から他の作業を手伝う等の気遣いがみられた。もっと早くシステムの仕様に関する意見統一と仕事の洗い出しを終わらせておけばよかったのではないかと考えられる。

Bチーム:役割分担について:今回のプロジェクトではプロジェクトリーダーを定めず、合議制で作業分担を決めて作業を進めた。結果的にはメンバーの自発性に支えられて計画通りに作業は進捗したが、体制としては脆弱であり、全体として見たときに作業が効率的であったかどうかは疑問である。改善点として、メンバーの資質を見て適材適所で作業を割り振る役割としてプロジェクトリーダーか、あるいは、少なくとも各メンバーの作業進捗をフォローしつつ全体をまとめる役割としてPMOを設定しておけば、全体としてより効率的に作業を進められた可能性があった、と考えられる。

調達の目的、対象の設定について:システム調達の目的やその対象(機能)について、現状を調査して新たな事実が判明する中で、プロジェクト進行中に当初の設定から変更が加わった。これは、現状の分析に基づいて柔軟に対応できたという点でポジティブに評価できるかもしれないが、一方で、現状に合わせて都合良く調達目的や対象を変えてしまった(当初の目的を果たしていない)、とネガティブに捉えることもできる。今回は少人数のプロジェクトであったから柔軟な変更も可能であった。しかし、大規模のプロジェクトの運営においてはこのような変更は容易でない上に好ましくないと考えられるため、プロジェクトの最初の段階で調達の目的と対象を明確に定め、それらをプロジェクト進行中に安易に変更できないルールを設けることが妥当と考えられる。今回のプロジェクトに対する改善点としては、メンバー決定後の最初の1週間のうちに、目的と対象を(綿密な現状分析に基づいて)定められていれば、その後にぶれることなく調達仕様書の準備を進められた、と考えられる。

場所

東京大学本郷キャンパス工学部2号館246教室 他

参加者・人数

参加人数:11名(東大生)

講師/ファシリテーター

萩谷昌己
(東京大学大学院情報理工学系研究科教授)

原稿執筆:萩谷昌己他