The Adventures of Rice

The workshop was held on September 16, 2015. Participants were provided with recipes for non-Japanese dishes. They identified ingredients and then guessed the country of origin for each dish. The only clues given were the methods of cooking and the seasonings used. The participants gave different answers for each dish: e.g. India, China, Thailand. Thereafter, the workshop organizer indicated that the dishes were only from one country and had the participants guess again. Through participatory cooking activities and the guessing games (which utilized critical thinking), the participants were encouraged to experience the dynamic nature of food.

企画の背景

 ある国の文化を理解するときに、知識ではなく感覚で受容する方法はないかと考え、ワークショップのテーマを決定した。調味料や食材の移動、調理法の伝播は、人の行き来の歴史と関わって発展している。作る・食べる・考えるという3つの活動を通じて、それらの経緯に思いを馳せること、その活動を通じて自国の食文化を相対化することを目的として、ワークショップのデザインを行った。

どんなワークショップ?

・本ワークショップは、調理という活動の特性をどのように捉え、体験してもらうかという点を何度も話し合い、自分たちで実践しながら適切な方法を模索していった。
・ワークショップでは、最初に調理に使う食材を各グループのテーブル上に準備し、食材を見ながらどのような料理ができそうか、どの国の雰囲気を感じるか、などについて自由に発言してもらった。
・次に、レシピを配布し、料理名を伏せたまま調理を行ってもらった。ファシリテーターは調理活動をどの程度サポートするのかについて、プレ実践などを重ねながら、適切だと思われる方法を決定した。本実践では、参加者自身が考えながら調理をしてほしいという思いから、できるだけ配布レシピによって調理を誘導することに注力し、レシピに掲載する情報は、写真と調理法の説明にとどめた。
・調理と実食後、参加者に、自分たちの調理をふり返りながら料理名と料理のルーツについて考えてもらった。調理後のディスカッションに関して、ファシリテーターは、コメントをしたり誘導をしたりすることをせず、ディスカッションの経緯の中で出た発言について反応することによって、進行管理を行った。
・ディスカッションのあとに、調理名と国名(マレーシア)を発表し、どのような経緯で料理が生まれ、実際の国(マレーシア)ではどのように食べられているかなどについて、主催者側からプレゼンテーションを行った。他国の食文化の魅力にも気づいてもらうことを目的に、食材の移動や調理法の移動は人の行き来とかかわっていることなどにも触れ、自国の食文化を相対化し伝えた。

プログラム

5min

概要説明

15min

アイスブレイク

15min

お米文化の紹介

30min

グループワーク1 : 食材から浮かぶイメージについて自由に意見を交わす

10min

レシピ配布・説明

55min

調理・片付け・配膳

30min

食事

30min

グループワーク2 : 作った料理はどこの国で食べられている料理か?

30min

グループ発表

30min

マレーシアの食文化紹介

20min

全体まとめ・参加者意見交換

ワークショップの成果

・多くのグループが最初に食材を見たときに、正解ではないものの国や地域の見当をある程度つけていた。しかし、調理・食事という活動を経ることで、最初の予想を再考したり、新たな手がかりを参照したりするような発言が観察された。また、グループワーク2では自分自身の調理・旅行経験や、異国の知識などを参照しながら、国を絞り込んでいく様子が見られた。
・プレ実践では地図を描きながら料理の地域を予想するグループや、歴史的な知識をもとに予想をたてるグループも見られた。グループごとに、予想のたて方や答えに至る過程に差はあったものの、多くのグループが、食材のイメージを調理・食事という体験を通じて再考している様子が見られた。

ふり返り

・調理を活動に入れたことで、様々な難しさがあった。参加者の料理の知識と技量の差を、どの程度活動デザインで克服していくか、という課題への対策は参加者の様々な調理経験を考慮し、グループ分けで調理の技量を平均化するという方法を選択した。また、プレ実践を重ねるなかで、調理が終了する時間にも差が出ることに気づいたため、配布するレシピを工夫し、スムーズな進行を心がけた。
・レシピや調理方法について、グループを超えて議論してほしいという意図があったため、グループごとに異なるレシピを提供したが、活動の内容が多岐にわたっていたこともあり、グループ間でのコミュニケーションの時間をしっかりと取れなかったことが、課題として挙げられる。
・参加者が食材や調理法を文化や歴史と結びつけた議論をしながら、国を予想することを期待していたが、参加者間で地理や料理に関する知識や興味にばらつきがあったため、ディスカッションの視点や進行に差が見られた。自身の経験や歴史的な知識をもとに、様々な視点を参照しながら食材や文化について活発に議論をしているグループがある一方で、議論が滞った際に、新たな視点をうまく見つけられず、最初の予想に戻るグループも見受けられた。このようなことから、参加者の知識や経験に合わせ、議論が行き詰まったときに参照できるような資料を準備しておく、などのデザインが必要だったのではないかと考えている。

アイテム

レシピ(Nasi Lemak・Nasi Briyani・ Nasi Goreng)、食材、調味料、調理器具、食器、付箋、模造紙、プロジェクタ

開催日時

2015.9.16 (木) 10:00 - 15:00

場所

東京都文京区 アカデミー茗台

参加者・人数

6名

講師/ファシリテーター

Alex Yuen(東京大学大学院学際情報学府 修士課程)
田中真知子(東京大学大学院学際情報学府 修士課程)
原田悠我(東京大学大学院学際情報学府 修士課程)
堀江麗(東京大学大学院学際情報学府 修士課程)

原稿執筆:田中真知子、原田悠我