Social ICT Publishing 01

If you had the good fortune to publish a book as part of the Kodansha publishing company’s famous Blue Backs series, what kind of book would you plan? The Blue Backs is a science and technology book series released by one of the biggest publishing companies in Japan. Its main readers are neither academic specialists nor laypersons without interest. The books in this series are intended for general citizens who have an interest in science and technology. The development of the Japanese intellectual sphere has been assisted by these kinds of quality books and magazines for a long time. In this workshop, GCL students learned about the basic mindset and skills required in science communication by creating and discussing an imaginary publication plan with university researchers and editors from Kodansha.

企画の背景

 2015年度、講談社と水越伸、佐倉統(いずれも情報学環)らは、学術出版(人文書)の再生に関する共同研究の企画検討をおこなってきた。講談社は日本で最も大きな出版社の一つで、学術文庫、現代新書、メチエ、ブルーバックスという4系統の学術出版のシリーズを抱えるユニークな出版社である。デジタル化の進展の中でこれら学術書が生みだしてきた人文書の知というものを、いかに健全なかたちで維持し発展させていくかは、出版社の問題に留まらず、とくに若手研究者の発表の場、社会連携の場を確保していくためにも重要な課題である。
 このワークショップでは、そうした問題関心から若手研究者であるGCLコース生と講談社の編集者、学際的な関心を持つ研究者らが協働し、人文書の知を共有するとともに、書物をめぐる共同体の重要性を確認することを目的として実施された。7月に関係者でプレワークショップをおこない、10月に開催したが、これもまだデザイン途上のものであり、そのことは受講生にも伝えた。GCLの主旨に合わせ、今回はブルーバックスを取り上げた。
 ちなみにここで言う人文書とは、文系の書物という意味ではなく、専門家を対象とした学術出版でもなく、一般を対象としたノウハウ本でもなく、それらの中間にあって日本の市民社会を維持し発展させてきた教養書一般のことをさす。

どんなワークショップ?

 あなたの専門や問題関心があることがらを仮に講談社ブルーバックスの一冊にできるとしたら、どんな企画の本にしますか──本ワークショップでは、講談社の現役編集者、大学研究者ら(科学技術社会論、医薬品情報学、メディア論)とともに、仮想的にブルーバックスの企画を考え、議論し、合評することを通して、GCLコース生に不可欠な科学技術社会論、科学コミュニケーション論の基本的な姿勢と知識を学ぶことを目的としている。
 情報学環の佐倉統、水越伸らが講談社と進める出版メディアの未来についての共同研究の一環で、まだ準備段階、すなわちプレワークショップではあるが、ワークショップの準備の過程自体に立ち合うことも重要な経験だと考えた。
 具体的な内容は以下のとおりである。
 1日目は、ファシリテーターの水越による概要説明、自己紹介ののち、まずは編集者の方々から「講談社ブルーバックス」について概説をいただいた。その後、堀里子さん(医薬品情報学、育薬学)、佐倉統さん(科学技術社会論)により、研究紹介と、ブルーバックスを出すとしたらどんなテーマ・内容がよいかという話し合いがおこなわれた。続いて、2つのグループ(講談社1名+教員1名+受講生3名)を編成し、各グループで受講生の専門やアイディアについてディスカッションをした。しっかりと企画してくることを宿題として、1日目を終えた。
 2日目は、受講生による発表、質疑応答に続き、まとめ作業をおこなって締めくくりとした。

プログラム

1日目
15min

あいさつ、自己紹介

30min

編集者によるプレゼンテーション

30min

堀×講談社/佐倉×講談社:話し合い・質疑応答

40min

グループワーク

2日目
10min

あいさつ、ふり返り、予定確認

100min

受講生による発表と質疑応答

10min

まとめ

ワークショップの成果

受講生には、専門知とも日常知とも相対的に異なる「人文書の知」とでもいうべきものの存在が理解された。講師を務めてくださったすべての編集者からも、日ごろは単独で活動する編集者がたがいのパースペクティブや技術などを学ぶ、編集者相互の学び合いの機会(一種の研修の機会)との声があがった。

ふり返り

本ワークショップは受講生にも講師にも好評で、今後継続的におこなっていくことが期待されている。いまだ準備段階のものであったが、今後、より時間をかけたプログラムを実現できれば、人文書というメディアがもたらす知の共同体を編集者と若手研究者が協働して生成するための一つのきっかけとなる可能性を秘めていることがわかった。

アイテム

PC、プロジェクター

開催日時

2015.10.22(木)19:00 - 21:00
2015.10.29(木)19:00 - 21:00

場所

東京大学工学部14号館145室

参加者・人数

6名
GCLコース生5名(創造情報学1、コンピュータ科学1、電子情報学2、マネジメント1)+外部生1名

講師/ファシリテーター

講師:
佐倉統(東京大学大学院情報学環 教授、科学技術社会論)
堀里子(東京大学大学院情報学環 准教授、医薬品情報学・育薬学)
所澤淳、倉田卓史、井上威朗、青木遊(講談社編集者)

ファシリテーター:
水越伸(東京大学大学院情報学環 教授)
会田大也(東京大学大学院GCL GDWS特任助教)

原稿執筆:水越伸