The workshop to determine research scope for the Nudge Unit’s interdisciplinary research project

5 graduate students from diverse departments of the University of Tokyo formed UTokyo Nudge Unit in 2015 to develop healthy eating promotion program based on behavioral economics, which U.K, and U.S. governments had started using as new initiatives. With wide range of domains from rational choice, prospect theory, bounded rationality, time discounting and present bias, and social norm, the Unit needed to determine what perspectives of behavioral economics are relevant to healthy eating promotion and what hypothesis it can insist to design better decisions of eating. The Unit needed an effective and doable framework of team discussions starting from the objectives of the studies and ending up with practical questionnaire questions.

The Unit also needed to design how to conduct intervention experiments for eating behavioral change, while there were no classic methods of such experiments. The Unit also required a framework to determine the experimental design.
The Unit used Issue-Based Technique and prototyping respectively, having plan-based meetings to discuss and determine logical diagrams and experiment planning.

企画の背景

Thaler & Sunsteinが2008年に「Nudge」という言葉で行動経済学を一般化し、イギリス政府が2010年に「Behvioural Insight Unit」を設置して以来、ヘルスケア、金融改革からエネルギー政策に至るまで、Nudgeは幅広い用途への適応が始まった。この動きを受けて、疫学、公共政策など多様性のある大学院生がNudge研究に関心を持ち、Nudge Unitの結成に至った。専門領域が異なる集合体でありながら、積極的かつ創造的な議論を通じて共通の研究領域を食事選択の行動変容に関心事を絞り込むことができた。また、食事の難関な(つまり最も三日坊主になりやすい)行動変容にも行動経済学Nudgeが有効であるという仮説の検証の方法としてWebアンケートとピアグループの介入実験を進めることをこの研究ユニットの方針と決めることができた。
 学生主体の研究ユニットであることに鑑み、専門領域が異なっていても、プロジェクト途中で研究目的から注目する行動経済学的特性がぶれないように、「思考のスキーム」を使って不動の共通コンセンサスを持つ必要があった。加えて、介入実験は関連する先行研究が少なく、学際的なダイバーシティが生む実験設計に対する意見の相違が、共通コンセンサスを崩す危険性を懸念する声もあった。
学際的なダイバーシティをスマートな議論にして、議論を可視化し、最適な方法を勝ち取る手段として、議論全般を思考のフレームワーク「Issue-Driven Technique」「Prototyping」を活用した一連のワークショップとして進めることにした。

どんなワークショップ?

仮説の検証の方法として実施したかったWebアンケートとピアグループの介入実験それぞれに対してワークショップを進めた。前者は、「行動経済学的特性と野菜摂取行動に関するWebアンケート調査」で、後者は「ピアプレッシャーによる食事選択の行動変容のための介入実験」。ワークショップとして、研究行為に進む前の論点整理を行う位置付けである。思考フレームワークを使って全員参加で議論してまとめていくワークショップの形態をとった。
 Webアンケートの論点で使った思考フレームワークは「Issue-Driven Technique」。組織目的を最上位に置き、プロジェクトの目的を下位に、その目的を達成するときに阻害となる要因を「課題」としてさらに下位に、それらの課題を解決する仮説をその下位に掲げ、これらの仮説を検証するときの設問を「キークエッション」(Key Questions)として定義する。当初はおもむくまま頭中にあるキーワードを列挙し、フレームワークの中にマッピングした。左から「研究目的」「検証したい仮説」「分析手法」「因子」「アンケート項目」になるようにまとめて行った。「アンケート項目」は「キークエッション」である。
 介入実験の論点で使った思考フレームワークはプロトタイプ。ラフな概念図である「ブループリント」を先に描き、「マクロ設計」「構成・構築」「展開」を進め、「マクロ設計」にまた戻り、繰り返していく反復作業によるアジャイル型開発手法である。可能な限り想像できる実験の概念図をブループリントとし、作業表を作成して、プロトタイピングとして予備実験を行うことで、不十分な事項を洗い出す方法をとった。

プログラム

5.17、5.31、6.7、6.14

ブループリント

6.21、6.28、7.5

マクロ設計

7.26、8.2

構成・構築

8.16

展開

8.23

マクロ設計

9.6

構成・構築

9.10

展開

9.13

マクロ設計

9.20

構成・構築

9★

展開 

ワークショップの成果

「行動経済学的特性と野菜摂取行動に関するWebアンケート調査」のために、論理的に研究目的との整合性のあるアンケート質問項目を作成することができた。「ピアプレッシャーによる食事選択の行動変容のための介入実験」のためには、漏れがなく、確実に実験成果の出せる実験手順を作成することができた。
いずれのアンケート、介入実験も2016年10月に実施し、成功裏に履行することができた。本ワークショップに参加した松岡洋子、中井梨愛、及びワークショップを推進した的場大輔がそれぞれ「Webアンケートによる行動経済学特性と食事選択行動に関する分析-野菜摂取行動と行動経済学的特性の関連性に係る検証-」「The Sexual Differences in Health Oriented Time Discounting and Risk Aversion in Japan: An Observation of Virtual and Real Food Choice Experiments」「ピアプレッシャーによる食事選択の行動変容への影響」というタイトルで論文を作成した。

1)行動経済学的特性と野菜摂取行動に関するWebアンケート調査の成果

2)ピアプレッシャーによる食事選択の行動変容のための介入実験
介入実験を実施するために必要な手順書、関連文書を、ワークショップを通じて作成し、リファインを繰り返した。次表はそのリストである。

D0. 介入実験段取り表
D1. レイアウト図(10/4用)
D2. Wii・座席対比記録表
D3. 談話リスト
D4. テープル識別シート
D5. 着席ガイド
D6. チェックリスト
D7. 誘導用配席リスト(10/5・7用)
D8. 参加者用配席シート
D9. 案内係用配席リスト
D10. 実験説明書
D11. オーダー記録票
D12. メニュー(10/4用)
D13. メニュー(10/5用)
D14. メニュー(10/7用)
D15. 搬出物リスト(持ち物リスト)
D16. 長机貼り付け用席番号(三日間用)
D17. 誘導用配席リスト(10/4用)
D18. 配布用着席図
D19. 全体説明書(10/4用)
D20. 案内係シナリオ
D21. 問題記録シート(10/4用)
D22. 長机貼り付け用お願い(10/4用)
D23. NUメンバー&業者の連絡先
D24. 総務省への入館予約状況
D25. 配布用ID番号(10/4用)
D26.搬出入場所(赤帽用)

ふり返り

Nudge Unitは行動経済学Nudgeをオープンに議論する場として始まり、公共政策大学院、教育研究科臨床心理、医学研究科、農学国際、学際情報学府といった幅広い部門から偏りない人材がこれに集まった。学際的な知見の融合・共創を目指すGCLの場であるからこそできた活動である。議論の共有から具体的な共同作業に研究活動を深化しようとしたときに、「行動経済学の食事選択への応用」という比較的レンジの広い研究テーマへの関心から、特定焦点のアンケートや介入実験を全員が協力して実施するところにピンフォーカスする必要があった。
この時の参加メンバーが持つ関心事を振り返ってみると、次図のようにバラバラであった。

一連のワークショップを行うことで、Nudge Unitは関心事の取捨選択を行い、共通の関心領域とブレない焦点を獲得することができた。
Nudge Unitは実施したアンケートと介入実験の成果を礎にして、今後、コグニティブコンピューティングと融合させ、人とヒューマンエージェントのハイブリッドな介入による同調のメカニズム開発を目指そうと考えている。さらなる学際的な交流が必要となり、今回経験したワークショップをよりプロセス化し、計画的に進めて行きたいと考える。

アイテム

Issue-Based Techniqueの方法論解説資料、ホワイトボード、PowePoint、Excel、バランスWiiボード

開催日時

2016年5月 - 9月

場所

東京大学本郷キャンパス工学部3号館GCLラボ
情報学環・学際情報学府・学環コモンズ

参加者・人数

5名
(公共政策大学院2名、教育研究科臨床心理1名、医学研究科1名、農学国際1名)

講師/ファシリテーター

的場大輔(東京大学大学院学際情報学府 修士課程)

原稿執筆:的場大輔