The Use of ICT Access Promoting System to Fill the Service Gap of Depression

Despite the high prevalence of depression, many people do not seek professional help in Japan. To explore an appropriate intervention for this service gap, the researchers have developed an “ICT Access Promoting System” to facilitate perceived effectiveness of treatment and seeking professional help. The system consists two contents: 1) a psychoeducation website about depression and effectiveness of treatment, and 2) a website using Artificial Intelligence to deliver treatment experience by monitoring user’s daily mood/health and giving professional advices. The purpose of this workshop was to discuss how this system could be used to fill the service gap of depression. The workshop was held in 2 days and 4 students who have an acquaintance with the experience of being depressed participated. First day was for the participants to learn about the basic knowledge of help-seeking research and experience the system. Then, a homework was given to experience the system for a month. The second day was held by dividing the participants into two groups and to discuss about the use of system to promote professional help-seeking. As a result, the two groups came up with ideas to enrich the gamification of the system to prevent drop out. Also, the participants suggested to use the treatment experience website as a “monitoring app” and lead to a psychoeducation website when the users were found to be depressed. These ideas have implications for developing better system and intervention to fill the service gap of depression.

企画の背景

うつ病の症状を改善できる治療や援助は専門機関で提供されているが,うつ病罹患者の7割以上は受診しないと言われている。受診が遅れると症状は悪化し,長期的な能力低下をもたらし,自殺のリスクが高まる。このように,問題を抱えた個人が,専門的な治療や援助が必要とされる状況にあるにも関わらず,そのサービスを利用しない現象はサービス・ギャップと呼ばれ,早急に解決すべき社会問題である。本ワークショップの企画者は,サービス・ギャップの対策として,先行研究で主に検討されてきた「症状理解」の促進や「スティグマ」の軽減だけでなく,「治療効果の理解」の向上に着目して研究と対策の検討を進めている。その対策では,①うつ病治療に関するリテラシーを高める心理教育サイト(うつ・いっぽ・いっぽ)と,②利用者の健康状態に合わせて専門家(AI)が行動提案をする治療体験サイト(AI版いっぷく堂)を用いた『アクセス促進システム(以下,システム)』を開発し,治療効果の理解を高めることで専門機関への受診意図と受診行動が向上するかについて効果研究を実施している。そこで,本ワークショップでは,開発したシステムをどのように社会の中で活用していけるかについて検討するために,家族や友人,知り合いがうつに罹っていた方とのディスカッションを通して明らかにすることを目指して企画された。

どんなワークショップ?

本ワークショップは計2回で行なった。1日目は,ファシリテーター(企画者)からうつ病をめぐるサービス・ギャップと援助要請研究の講義を行い,開発した『アクセス促進システム』を紹介した。その上で,実際にシステムを使用体験していただき,感想や意見をシェアした。その後,ホームワークとして1ヶ月間システムを利用していただいた。2日目は,システムの使用体験を踏まえてサービス・ギャップの解消に向けた活用方法についてディスカッションを2つのグループに分けて行なった。

プログラム

1日目
10min

主旨の説明

20min

自己紹介とアイスブレイク

30min

サービス・ギャップと援助要請研究の講義とアクセス促進システムの紹介

10min

休憩

30min

アクセス促進システムの使用体験

20min

感想や質疑応答とホームワークのお願い

2日目
10min

趣旨の説明

10min

ホームワークのシェア

20min

ディスカッション①(アイディアを付箋に書き出す)

20min

ディスカッション②(模造紙を使用してアイディアをまとめる)

15min

各グループで意見のシェア

15min

感想や質疑応答とワークショップのまとめ

ワークショップの成果

まず,参加者に体験してもらったシステムの使用感から,課題と改善点の提案が得られた。情報提供サイトの課題としては,うつ病に罹患した場合を想定すると文字数や情報の分量が多いことから,動画を使用して情報を軽量化する提案が挙げられた。治療体験サイトの課題としては,利用者の気分や身体の状態に合わせて専門家(AI)による行動提案のアドバイスが毎回類似して飽きてしまうことから,アドバイスの幅を広げることが挙げられた。また,ゲーム感覚で毎日続けられるようにゲーミフィケーションを追加することや,気分が落ち込んでいる時でもリラックスした状態で利用を継続できるようにBGMを用いる等の機能を充実させることが提案された。 続いて,サービス・ギャップの対策に向けたシステムの活用方法に関する検討では,うつ病の早期発見・早期受診を促進するための方法がいくつか提案された。まず1つ目に,開発したシステムでは,うつ病治療に関する情報提供後に治療体験をしてもらうが,システムの入り口としては,治療体験サイトを“日々のモニタリング”アプリとして活用し,利用者の気分の落ち込みが続いた時に情報提供サイトへ移行させる順番に代えた方が,利用者の状態に合わせて専門機関を紹介しやすいことが挙げられた。また2つ目に,情報提供サイトと地図アプリを連携させ,利用者に受診可能な専門機関を提案する機能を追加することで受診行動が促進される可能性が高まることが挙げられた。その一方で,システム内の質問に対する回答に個人的な経験や情報が含まれる場合があるため,プライバシーや安全性を保証することと,システムと受診可能な専門機関との連携には注意する必要性が議論された。

ふり返り

本ワークショップでは,うつ病に罹患した者が身近にいる方にアクセス促進システムの使用体験をしていただいた。うつ病の状態に詳しい関係者ならではの意見や視点を生かしてアイディアを出し合い,サービス・ギャップの課題に対するディスカッションを進めることで,うつ病に罹患した方が使いやすいようにシステムの改善点や活用方法について深い議論をすることができたワークショップになったと感じている。

アイテム

PC, プロジェクター, レクチャー用スライド・配布資料,利用体験用のコメントシート,ディスカッション用の模造紙,付箋,マーカーペン

開催日時

1日目:2018年5月18日16:00〜18:00
2日目:2018年6月15日16:00〜17:30

場所

教育学部棟 第2会議室

参加者・人数

学部2年生4名(うつ病に罹患された者が身近にいる方)

講師/ファシリテーター

シュレンペル レナ(東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース 博士課程)

原稿執筆:シュレンペル レナ