Strategy Meeting to Create and Spread New Values
Given the worldwide popularity of Japanese sushi culture and the number of foreign visitors expected to visit Japan during the 2020 Olympic Games, the Japanese Government and some NGOs are pushing for the introduction of a nationwide marine product certification system to ensure food safety. Even though this kind of certification system has had certain degrees of success in European countries and the United States, its introduction to Japan has been delayed. These delays demonstrate the need to establish strategies that take the Japanese social and cultural context into account to create “new values” in support of such a system. The main aim of this workshop was to explore the strategies required for the establishment and dissemination of new values in the context of Japanese society, with participants using the case of the marine product certification system as an example.
On the first day, Mr. Takeya first gave a lecture on thinking and the practical process required when spreading new products and services to a society based on long-term business strategies. Next, Ms. Ishihara presented a lecture on the problems associated with Japan failing to introduce a nationwide marine product certification system and how Japanese society would benefit from its introduction. After the two lectures, participants were divided into two groups for discussions that examined how existing marine product certification systems can be introduced to Japanese society. At the end of the first day, each group’s strategies (including opinions against the introduction of a certification system and proposals for alternatives) were presented. One group proposed a social and cultural system aimed at eel resource management that replaces the certification system, and another proposed a tax system aimed at the simultaneous development of fishery resource management and a certification system. In each proposal, participants questioned the need for a certification system, and instead proposed alternatives appropriate to the Japanese cultural context and their ideal vision of society.
On the second day, discussions transitioned to the new values and services that each participant wanted to disseminate in society. Those ideas were developed during a series of presentations and feedback sessions. During the presentations, feedback was provided in the form of “emotional markers” to instantly assess the response of the audience. At the end of the entire workshop, lecturers provided their thoughts, and participants reflected on the experience.
企画の背景
近年の寿司文化の世界的広まりや東京オリンピックの開催決定を受け、日本政府、NGO等は水産物認証制度の普及を急いでいる。これは自然環境に配慮して生産された水産物を認証し、その製品に「エコラベル」をつけて、消費者が店頭で見てすぐにわかる仕組みを確立しようというものである。しかしこれらの認証制度は、欧米諸国では一定程度の成功をおさめているものの、日本ではその導入が遅れているという現状がある。日本社会において何か「新たな価値」やその基準を普及・定着させようとする際に、どのように戦略を立て、実践することが必要なのであろうか。こうした問題意識を踏まえ、本ワークショップでは水産物認証制度を例にとり、「新たな価値」を日本社会の文脈の中で普及・定着させるために必要な戦略を参加者と共に模索することを目的とする。
どんなワークショップ?
まず竹永亮氏から長年の経営戦略に係る実務経験をもとに、新しいモノ・サービスを社会に普及させる際に踏むべき思考・実務プロセスの講演をしていただいた。続いて石原広恵氏から、新しい価値普及に係るケーススタディとして水産物認証制度を例にとり、社会における必要性にもかかわらず現状の日本社会に普及がなされていない実状と問題点について講演をしていただいた。二つの講演のあと、現行の水産物認証制度をどのように日本社会に普及できるかを検討するグループワークを「問題出し」と「戦略のアイデア出し」の二つのフェイズに区切って行った。初日の最後には、各グループによる水産物認証制度に係る普及戦略(認証制度をやめることや、それに替わるものの提案も含む)の発表が行われた。2日めには、各参加者個人が考える社会に普及させたい新しい価値やサービスに議論を移し、発表とフィードバックを繰り返す形でアイデアのブラッシュアップが行われた。発表時においては、聴衆の反応などが瞬時にわかる「感情マーカー」を活用したフィードバックが行われ、最終案の発表後には講師の方からの講評と参加者間でのリフレクションが行われた。
プログラム
1日目 | ||
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20min | 趣旨説明/アイスブレイク(肩書きつけ合い・紹介) | |
25min | 講演 (1) 竹永亮氏「新サービスを世に広めるためには◯◯をしろ~企業におけるマーケティングと経営戦略の基礎の基礎~」 | |
25min | 講演 (2) 石原広恵氏「水産物認証制度の日本における普及の可能性と課題」 | |
(休憩) | ||
60min | アイデア(問題点)出し:「なぜ水産物認証制度は日本で広まらないか」 | |
(休憩) | ||
50min | アイデア発展:「日本で水産物認証制度を広めるために最適な戦略は何か」 | |
30min | 全体共有とまとめ/2日めに向けての宿題提示 | |
2日目 | ||
60min | 発表準備(水産認証に限らない各参加者が社会 に広めたい価値について) | |
(休憩) | ||
45min | 各アイデアの発表・質疑 | |
30min | 参加者からの情報フィードバック+案の再構築 | |
(休憩) | ||
30min | アイデアの最終発表(聞き手は感情マーカーを利用) | |
30min | 初日の講演者からの講評と学生間でのリフレクション | |
30min | 全体リフレクション/ラップアップ |
ワークショップの成果
本ワークショップの初日では、二つのグループから「うなぎの資源管理を目指した認証制度に替わる社会・文化的制度」と「漁業資源管理と認証制度の相互発展をねらった税システム」の提案が行われた。それぞれ、認証制度そのものに対するこだわりを捨て、それが目指す理想的な状態を見据えた上で日本の文化コンテキストを考慮した代替案の提案となった。2日めには、各学生参加者から、それぞれの専門分野や興味関心に根づいた五つの新しい価値とその普及に関するアイデアが提案された。
ふり返り
本ワークショップでは、初日における水産物認証制度のスタディと、2日めの各自の興味関心に基づいたテーマに関するスタディの両方を通じて、各自の研究・活動分野で生み出す種々の「新たな価値」を、対象物にかかわらず、社会に広めるための実践的知見を身につけることが期待された。初日の最後に示されたグループワークの結果については、それぞれ、認証制度そのものに対するこだわりを捨て、それが目指す理想的な状態を見据えた上で日本の文化コンテキストを考慮した代替案の提案となっており、また2日めの各参加者によるアイデアの提案についても幅広いものとなったが、共通していた特徴の一つとして、自身の研究の枠を超えたところにある視点を他の参加者から得た上で、多分野通態的(multi-disciplinary trajective)な社会課題に対する切り口の吟味の段階を経ていたことが挙げられる。 多分野連携という言葉が叫ばれるようになって久しいが、分野が連なっているという環境条件以上に、構成員がそれぞれの専門分野を行き来することができる様態における議論(多分野通態的議論)を行う能力を有しているかどうかという条件が、常に状況が変化する社会実践的プロジェクトの成功を左右する。GCLプログラムにおけるワクショップはイノベーションを生み出す手法の一つである一方で、教育手法の一つでもある。本ワークショップを通して、オープンエンドでありながら一定のベクトルに向けて議論や活動等をファシリテートするというワークショップの特性が、参加者の専門分野からの視点逸脱を許容しながらも指向性が与えられた思考を促すことで、多分野連携を可能にする素地を学ぶ良質な機会の提供にもなるという、ワークショップが持つ教育手法としての可能性をあらためて確認することができた。
アイテム | 模造紙、付せん紙、ワークシート、 感情マーカー(木製トークン) |
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開催日時 | 2017.10.29 - 30(土 - 日) |
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場所 | 東京大学弥生キャンパス 7号館B棟234・235 |
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参加者・人数 | GCL学生5名 |
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講師/ファシリテーター | 杉本あおい(東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程) |
原稿執筆:杉野弘明