Onuma Future Design Workshop
In recent decades, Japanese rural areas have been facing a variety of complex problems, ranging from ecosystem degradation to depopulation. To cope with such challenges, it is now necessary for many rural areas to propose visions of sustainable societies and implement strategic management, considering development of both human society and natural ecosystems at the same time. Therefore, this workshop aimed to canvas residents’ interests and opinions regarding their surroundings and their visions of the region in the future, and to include their views as important to discussions.
The Onuma region (Nanae town, Kameda district, Hokkaido) was chosen for the case study. This region includes the Onuma Quasi-National Park (designated in 1958), which encompasses the volcanic Hokkaido Komagatake as well as the Onuma and Konuma ponds. Onuma was registered under the Ramsar Convention as a habitat of wild birds in 2012. Economic conflicts among lake fisheries, tourism and agriculture have appeared as water quality has deteriorated due to human activities around the ponds. Therefore, principles and rules for environmental conservation are currently being considered.
In this workshop, students became organizers and facilitators in the workshop and its planning process. The kickstart session was held at the University of Tokyo on September 12th and 13th, 2017. In the leadup to the main workshop in the Onuma area of Hokkaido with local residents, Skype meetings were held almost every other week to discuss the content and the method of facilitation. The main workshop was carried out in Onuma from the 3rd to the 5th of November with 20 local people, and a feedback session was held on December 17th.
企画の背景
北海道・大沼地域は、大沼を中心として豊かな自然を有しており、その環境を活かした観光・農林業・漁業・酪農が発展している。また、これらの生業と共存する形で古来の自然を守っており、2012年にはラムサール条約に登録された。一方で、人間の活動由来と考えられる環境問題や国定公園である大沼の管理・活用に関する制度的なハードル、変化しつつある観光客の動向など、大沼地域特有の課題も抱えている。日本における人口減少や地方公共財政といった日本全体が直面する課題の影響が顕在化してくる中で、大沼地域、ひいては七飯町、函館エリアの持続性を考えていく必要があると考えられる。
本ワークショップは、大沼地域住民・七飯町民の方々と一緒に、「自然やまち、都市に囲まれた日本において、“人が住まう場所”に対してどのように誇りと愛着を持ち、生きていくことができるのか」という本質的な問いに対して、「未来を描いて(フューチャーデザイン)」いくことを目的とする。
どんなワークショップ?
まず、2017年9月に大阪大学との合同ガイダンスを行った。ガイダンスでは、このたびの対象となる大沼地域に関する情報や、軸となる手法である「フューチャーデザイン」に関する情報の共有を行ったあと、にワークショップやファシリテーション、ファシリテーション・グラフィックに関するレクチャーを行った。9月から10月にかけての本番までの時期においては、スカイプ・ミーティングを行い、本番のワクショップにおける段取りや詳細の設定などを議論した。11月3日〜5日にかけては、北海道の大沼地域に赴き、現地の方と共にワークショップを行った。ワークショップのテーマとして、(1)未来人との対話、(2)自然環境との対話、の二つが設定されていたこともあり、それぞれを初日と2日めに割り当て、最終的な「まちのアクションプラン」に時間的な広がりと、人間社会に閉じない自然環境との共生に目を向けた広がりを確保することを試みた。2日間を通して、各グループ(3〜4人)でまとめられたアクションプランについては、各日程の最終日に他のグループと共有していただいたが、別日程の方のアクションプランなどについても知りたいという要望が事後ヒアリング時にあったため、12月17日にフィードバックセッションを行い、各人のアクションプランと共に、全体のものをKJ法でまとめ、カード化したものを共有し、再度参加者全体で各行動の有機的な繋がりを考慮しながら、将来像への大きな計画を立ててもらった。
プログラム
9.12(月)、9.13(火) | ガイダンス/メンバー顔合わせ/ワークショップの基礎、ファシリテーションの基礎、ファシリテーショングラフィックの基礎、使用する手法(フューチャーデザイン)についてのミニレクチャー | |
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9 - 10月 | 隔週でスカイプミーティング | |
1 1 . 3 - 5( 金 - 日 ) | 2日間の日程で、3グループに分けてワークショップ実施 | |
(ワークショップ1日目) | ||
10min | 挨拶/趣旨説明/ワークショップにおけるルー ルの確認など | |
10min | アイスブレイク(積み木自己紹介) | |
20min | 大沼の思い出共有(過去からの変遷を共有) | |
30min | 現状のまま進んだ際の将来の想像 | |
(休憩) | ||
〈タイムワープ >>> 2067年の世界へ〉 | ||
50min | 望ましい将来像/望ましくない将来像の共有 | |
〈2017年の世界へ戻ってくる〉 | ||
30min | 将来に向かってのアクションプランをまとめる | |
10min | まとめ・リフレクション/次の日の案内など | |
(ワークショップ2日目) | ||
5min | 挨拶 | |
10min | アイスブレイク(大沼“実は”グランプリ) | |
10min | 前日のふり返り | |
20min | 自然の代表者のプロフィールづくり | |
(休憩) | ||
40min | 自然の代弁者を交えた議論(前日のアクションプランを下敷きに) | |
(休憩) | ||
30min | 各グループでのプレゼンと結果共有 | |
15min | 全体のふり返り/ねらいなどの解説など | |
12.17(日) | 現地の方々への全体的なフィードバック |
ワークショップの成果
本ワークショップは、北海道大沼地域(七飯町)の住民の方々と共に、(1)「将来」指向の視点、(2)「まち」と「自然」の関係性、という2つの視点において七飯町のこれからを考え、共有していく試みを、ワークショップとその事前・事後における調査によって目指すものであった。ワークショップの最終アウトプットとして、大沼地域の住民自らにより、「将来」と「自然」の二つの視点を有することで得られた大沼地域に対する広いヴィスタ(見通し)をもとにした将来像と、それに向けたアクションプランが提案された。住民参加者による提案は、単純な環境保護や観光活性化というものではなく、それぞれ個人が抱える地域の葛藤を昇華させる形で地域の将来像への合意形成が進められたものであったことが、アウトプットなどから考察された。
ふり返り
本ワークショップでは、未来人となってまちづくりを考えることで、世代間における利益背反を乗り越えるという西條辰義が提唱する「フューチャーデザイン」ワークショップの考え方を基盤とした。しかしオリジナルのコンセプトにとらわれず、参加学生・教員が共にアイデアを出し合い、最終的には
七飯町の特徴でもある駒ヶ岳や大沼といった「自然」や、函館のような隣接する「都市」との関係性を俯瞰しつつ、今後の七飯町のあり方や方向性をまちに住む方々と一緒に考え議論するワークショップを設計するに至った。 七飯町役場、北海道大学、大阪大学、北海道国際交流センター(HIF)の協力のもとで開催・実施された本ワークショップの、計画から実施までに至るプロセス全体の成果の一つとして、ファシリテーターとして参加した学生にとって、実社会に開かれたワークショップをどのように設計・運営すればよいのかを学ぶ機会となったことが挙げられる。事前打ち合わせにおいて考えた設計の中でうまく運んだ部分、運ばなかった部分の両面を合わせて、今後学生自身が企画運営を行う必要性のあるWS-Cへの一つの手引きとすることができたと考える。
また、ワークショップ後の参加者へのアンケトおよびヒアリング、共同企画者の七飯町職員からのフィードバックにおいても、(1)ワークショップの可能性を感じたこと、(2)その後の住民間・住民―行政間のコミュニケーションが活発になったこと、などが主な意見として抽出され、東京大学GCLプログラムの存在を大きく示したものであったと考える。
アイテム | 模造紙、付せん紙、インターネット環境、コンピュータ、 ワークシート、ポータブルプリンタ、団扇、木製トークン |
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開催日時 | 2017.9.12(月)- 12.17(日) |
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場所 | 東京大学本郷キャンパス GCLラボ(9月勉強会、スカイプミー ティング) |
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参加者・人数 | GCL 学生7名 |
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講師/ファシリテーター | 武田裕之(大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻講師) |
原稿執筆:杉野弘明