mission02
企画の背景
2013年度第2回目の科学技術戦隊ワークショップは、2013年5月18日(土)~19日(日)に実施した。参加者は、東京大学ソーシャルICT GCL受講生、情報学府大学院生、前回ファシリテータの合計12名である。本ワークショップのファシリテータは、水越伸(情報学環・教授)、安斎勇樹(学際情報学府・博士後期課程2年生)の2名であった。
どんなワークショップ?
▼グループワークの課題
超高齢社会において、世代間をつなぐ新しいメディア環境を考える。超高齢社会における異なる世代間をつなぐ新たなメディア環境を構想せよ。祖父母世代と孫世代の交流を留意すること。
▼発表の形式
発表の方法は、寸劇や紙芝居などを取り入れてもよいことを伝え、以下の点に留意することを伝えた。(1)戦隊の名前、決めゼリフ、ポーズを冒頭に必ず入れること。その際、戦隊の名前や構成員の特技を紹介し、提案について発表すること。(2)提案する「新しいメディア環境」が実現した場合、1日の生活がどのようになるのか、分かるようにすること。
プログラム
1日目 | ||
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13:00~13:20 | オープニング | |
13:30~14:00 | ミニレクチャー | |
14:00~16:00 | グループワーク | |
16:00~17:00 | まとめ | |
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2日目 | ||
10:00~10:05 | オープニング | |
10:05~11:35 | グループワーク | |
11:35~11:45 | 休憩 | |
11:45~13:00 | 発表および合評、ディスカッション | |
13:00~13:15 | まとめ、全体ふりかえり | |
13:15~14:00 | クロージング |
ワークショップの成果
▼ワークショップの様子
○ミニレクチャー
水越先生は、メディアとはなんであるか考えるレクチャーであった。さらに、映画『息子』(山田洋次監督)の一部を視聴し、家族間の関係性と世代間をつなぐメディアについて問題提起した。
○アイスブレイク
前回までと同様に、まずは、グループ内で自己紹介をしてもらった。自分の所属や特技などをコースターの裏やポストイットに書き、相互に見せ合いながら話した。
○グループワーク
参加者はGCL受講生であり、1名を除いて前回のmission01ワークショップに参加していない者である。前回同様に、ワークショップやグループワーク未経験者が多く、意見調整に苦戦している様がみられた。活発な議論を繰り返し、グループの提案をまとめていた。
○発表
最初の戦隊名とポージングを表現した。自分たちのグループの提案を寸劇に表すのに苦戦しているグループが多かったが、自らのグループの提案を参加者に理解してもらうように努めていた。全グループの発表後、他のグループのメンバーらを含めた質疑応答を行った。
ふり返り
○mission02(ワークショップ時)全体として
mission02でも、mission01と同様に、異なる年齢層と専門分野同士が、1つの課題解決に向けてグループワークを行った。超高齢化という課題は、身近なテーマである。そのためか、どこのグループにおいても多様な意見があり、グループとしての見解をまとめるのに時間がかかっていた。参加学生の感想をみても、異なる角度からの意見を聞き、メンバーが全員納得するまで話し合い、問題を克服できたことが印象深かったようである。
▼レポート課題
mission02では、ワークショップ2日目から1週間経った後に、再度レポートの提出をさせた。これは、このようなワークショップ体験は、その参加している日だけに限らず、その後の生活や考え方に影響を及ぼすからである。レポートの課題は、(1)1週間経った今の時点であの2日間がどうであったと感じたのか、(2)その他、思いついたことや質問の2項目であった。
▼全3回のふり返り
本ワークショップの目的の1つに「異分野の専門家とディスカッションをすることの重要性と、難しさを知る」ことがある。GCL履修生が多く参加していたmission01とmission02ワークショップに共通していたのは、1日目は、学生の多くが、異なる年齢層や背景をもつメンバーの意見をまとめていくことに困難さを感じていたように見受けられたことである。
1日目のプログラム修了後、各自が課題の内容や、グループワークの作業について反芻する時間がある。さらに、グループの提案を寸劇という具体的な形に落とし込み、第三者に自らの身体の表現を通して伝えるという工程を踏まねばならないため、グループの提案内容に対する理解を深めていく必要がある。これは、mission02の課題で、多くの学生が良かった点として述べていた。このように、同じ言葉でも、背景によって異なる意味や印象を持つことを、相互に学び、2日目のグループワークで改善していく時間は重要であると考えられる。本学の大学院生は、専門性が高い講義を受け、国内外の同じ専門領域の研究会や論文誌での発表をする機会が多い。また、修了後は、企業や学術業界に就職し、異分野の専門家とチームを組み、プロジェクトを進めていく立場となる可能性も高い。先にも述べたが、これまで自分の意見を押し通すことしかできなかった学生が、本講義を受け、周囲の意見を聞くことができるようになったという報告もある。さらに、協働作業をすることによって、自分の考えに固執し続けてはいけないことに気づく瞬間がある、と報告した学生もいる。これらの報告からも、社会イノベーションを先導するトップリーダーを養成するにあたり、専門的な知識を身につける課程に所属しながら、協働作業を行う機会を設けることは重要であると考えられる。特に、GCL受講1年目の前半に開講することは、その後の学生相互の交流のきっかけ作りという観点から、参加学生にとっては有意義であったのではないだろうか。
開催日時 | 2013.5.18-19 |
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場所 | 東京大学工学部新2号館92B |
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参加者・人数 | GCL生7名 |
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講師/ファシリテーター | 水越伸(東京大学大学院情報学環教授)、安斎勇樹(GCL/GDWS RA) |
原稿執筆:大谷智子