Heartfelt Rural Planning for Iitate Village 2015: MAKIBANOHANAZONO Project
There was a serious nuclear power plant accident in 2011 in Japan’s Fukushima prefecture. Iitate Village is one of the areas that has suffered from the accident because of its radioactive contamination. We have discussed the restoration of Iitate Village since 2012 in a series of group works. In 2015, we focused on Mr. Ohkubo, a man who has decided to live in his own house in Iitate Village in spite of the evacuation instructions from the government. He loves flowers, so he has been planting lots of kinds of flowers and trees ― such as roses, cherry trees, narcissi, and so on ― in his garden, which used to be farm land. But he is not familiar with the principals of flower garden design and has no idea how to attract and please visitors. In this group work, we discussed how to realize his dream. We tried to make it sustainable using ICT ― an Internet connection is available at his house thanks to the support of an NPO. This workshop was done as part of the course work of the Department of Global Agricultural Science and the International Program in Agricultural Development Studies㸦IPADS㸧. So we had members with different backgrounds. In this workshop, we worked to benefit an actual plot of land on behalf of its owner, which means that we had the possibility of seeing our plan realized in the real world. It was a characteristic point of this workshop. We gathered together and discussed a lot at least once a week. We also visited Iitate Village in this group work to show Mr. Ohkubo the fruit of our labor.
企画の背景
前年度までの本グループワークでは、福島第一原子力発電所事故による放射能汚染のために計画的避難区域に指定された福島県飯舘村の復興計画について検討してきた。
本年度は、避難指示を受けながらも飯舘村の自宅に帰って生活する決断をした方の農地利用について考えた。大久保金一さんは花が好きで、桜やバラ、その他の草木の植栽を進めている。しかし、多くの人を惹きつけて楽しませるようなガーデニングデザインについては詳しくなかった。そこで本ワークショップでは、大久保さんの希望を実現するようなガーデニングデザインについて熟考した。そのデザイン案はICTを用いて持続可能となるように配慮した(家の周辺はNPO法人の協力によってWiFiによるインターネットが整備されている)。今回はこの情報インフラを利用して、ICTを組み込んだ花園としての農地利用の方策を探った。
このWSは、農学国際専攻およびInternational Program in Agricultural Department Student(IPADS)のコースワークと合同で行われた。そのためグループメンバーにはそれぞれ違ったバックグラウンドを持った学生が集まった。
本WSは実在の人と土地を扱っており、私たちの提案する案は実際に大久保さんの土地に実現することができる。この点が特徴であった。
ミーティングは最低でも週1回行われ、熱く議論した。大久保さんに本グループワークの成果をプレゼンするために1泊2日の合宿で飯舘村を訪問した。
どんなワークショップ?
大まかな流れは下記のとおりである。
・過去のグループワークが何を対象にしてどんな結論を出したのかを共有した。
・アクションプランを作成した。
・大久保金一さんに電話でインタビューを行った。
・花園の例として駒込の旧古川庭園を見学に行った。
・下見として有志のメンバーが飯舘村を訪問し、大久保さんにインタビューを行った。
・インタビューから大久保さんの望みを抽出した。
・グループワークを重ね、大久保さんの望みを実現する花園のデザインを考えた。
・大久保さんにグループで作ったデザインをプレゼンした。
プログラム
9.25 | 過去のグループワークの紹介 | |
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10.2 | グループメンバーの自己紹介・プロジェクトの導入理解 | |
10.7 | 大久保さんと電話 | |
10.9 | アクションプラン発表(講義) | |
10.16 | バラ園見学(於 旧古川庭園) | |
10.21、23 | 下見の聞き取り事項確認、デザイン書き出し | |
10.24-25 | 有志による下見合宿 | |
10.30 | 下見のフィードバック共有 | |
11.6 | 目的別に小グループ分け・議論(恩返し、園内ガイド、情報発信戦略) | |
11.13 | 各班中間報告・丹羽さん(ふくしま再生の会)に話を聴く | |
11.20 | 各班進捗報告・アイディア共有・今後の方針を議論 | |
11.26 | FUJITSU、GK Design、ふくしま再生の会の方々を交えて議論 | |
11.27 | 合宿でのプレゼンの方向性共有・今後のスケジュール確認 | |
11.30 | アイディアを統合 | |
12.3 | 各班進捗報告・発表資料作成役割分担 | |
12.4 | 発表資料作成 | |
12.5-6 | 飯舘村合宿・アイディアプレゼン | |
12.7 | フィードバック共有・報告書草稿作成役割分担 | |
12.11 | 報告書草稿提出 | |
12.18 | プレゼンテーション(講義) | |
12.25 | 報告書提出 | |
今後(2016年-) | アイディア改善・再提案・アプリケーション開発・造園 |
ワークショップの成果
本ワークショップの成果は大久保金一さんの農地のデザインである。詳しいデザインは別途まとめられた44ページの報告書に詳しく記述してある。また、ドローンを用いた空撮写真にデザイン案を書きこんだ付箋を貼っていったものが成果として残っている。このワークショップを通じてグループメンバーの大久保さんに対する共感が高まり、ワークショップ終了後にも大久保さんとその農地に関わっていきたいとメンバーが思うようになった。本グループワークの成果としての花園のデザインが実際に大久保さんの農地に実現するように、来年度のグループワークに引き継がれることを願っている。
ふり返り
グループメンバーは大変よくやったと思う。そのミーティングの頻度や、大量の精神的なエネルギーが投下された成果としての「マキバノハナゾノ」のデザインを見ればそれは明らかである。このようにグループメンバーがこのグループワークにエネルギーを投下してくれたことに感謝する。
どうしてグループメンバーがこのテーマに対して多くのエネルギーを投下してくれたのか。その理由を考えてみる。
・精力的なリーダーの存在→初動の勢い
・テーマが実在の人物の抱える問題であり、その人物に早期に電話でインタビューできたこと→共感というキーワード
・グループワークの成果が単なるパソコンの中の原稿作成ソフトのデータや印刷された紙の中にとどまらず、実際に実現できるということ→責任の具現化
・活発なコミュニケーション
・グループ分けしつつも、担当のグループに全責任をおしつけないこと→全員でチェックする。自分の問題として考えること。責任の具現化
責任の具現化という言葉が2回登場したように、責任を持つということは、グループワークにエネルギーを投下してもらうためには重要である。これは責任を持たせるために締め切りを設けてそれを守らせるということではない。締め切りを設けるのはグループワークを期限内に終わらせるために必要だが、締め切りによってある一個人が共通の課題に対してエネルギーを投下してくれるようになるわけではない。責任というものはボスが部下に持たせるものではなく、個人の中にある願望の表れなのである。締め切りを守らせるのがビジネスタイプのプロジェクトだとすると、グループワークはそれとはちがってボランタリーワークである。ボランティアが発生して動くということの原動力には、先ほども書いた共感というキーワードがある。
今回のワークショップでは実在の人物のためにデザインを作っていった。また作ったデザインは(大久保さんの高評価と了解が得られれば)実際に実現される可能性が十分高かった。実際に実現できるかどうかということは、たびたびメンバーからも質問されたことでもある。このことがメンバーのやる気を高めたものと考えている。
アイテム | コンピュータ、コピー用紙 |
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開催日時 | 2015.9.25(金)~2015.12.25(金) |
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場所 | 東京大学弥生キャンパス農学部7号館B: 231/232教室、福島県飯館村 |
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参加者・人数 | 8名 |
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講師/ファシリテーター | 石渡尚之(東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程) |
原稿執筆:石渡尚之