Workshop on operation of VR exhibition

Since 2016, we have exhibited VR works “Unlimited Corridor” using spatial perception manipulation technology. This work has been presented at academic conferences, science halls, and art exhibitions both in Japan and abroad. Through these exhibitions, issues of VR exhibition peculiar to museums different from presentations at academic conferences and science halls have come to light. Therefore, we conducted a workshop to verify the operation related to the VR exhibition at the museum with a developer, a curator, a staff and a user.
In the workshop, I used a slide to explain the VR work “Unlimited Corridor.” After that, I carried out the SNS reminiscence method to remember about the exhibition while watching the posts and images of “Unlimited Corridor.” Next, using the KPT method, we wrote ‘Keep,’ ‘Problem,’ and ‘Try’ about the operation of this VR exhibition and organized these on simili paper.
Through this workshop, we were able to identify the advantages and challenges of VR exhibition at museums.
The advantages are that the VR work was instagrammable, staffs were able to operate the VR work by themselves, and the presence of customers who bought tickets to make a VR experience.
On the other hand, the problem was found to be divided into ‘technology layer,’ ‘staff layer,’ and ‘user layer.’ As a problem of the technology layer, it is difficult to presume trouble in advance because we use immature technology. As a problem of the staff layer, the staffs were worried about the operation of VR equipment until they got accustomed to it. The issue of the user layer was that there were many customers who hesitant to wearing a head-mounted display and performing a VR experience in front of others.
Also, as an improvement, simplification of VR equipment and operations, and an increase in technical staff were mentioned.

企画の背景

企画者は平成28年度より空間知覚操作技術を用いたVR作品「Unlimited Corridor」を展示している.本作品は,視触覚間相互作用とよばれる視覚によって触覚や体性感覚が変化する現象とリダイレクテッドウォーキングとよばれる狭小な実空間で広大なVR空間を実際に歩行することを可能にする方法論を応用することで,実際には円形の手すりに掴まりながら歩く体験者に直線状の手すりに掴まりながらまっすぐ歩いていると感じさせている.
本作品はこれまでに国内外の学会や科学館,美術展で展示を行ってきた.こうした展示を通して,学会や科学館での展示とは異なる美術館特有のVR展示の課題が見えてきた.そこで,開発者・美術館関係者・体験者を交えた振り返り会を実施し,美術館におけるVR展示に関わるオペレーションを検証することにした.

どんなワークショップ?

初めに参加者同士で自己紹介およびアイスブレイクとしてGOOD&NEWを行った.GOOD&NEWとは24時間以内に起こった良いことや新しく知ったことを他の参加者と共有するというメソッドである.アイスブレイクの後,今回展示したVR作品「Unlimited Corridor」についての説明をスライドを用いて行った.その後,写真回想法に着想を得て,「Unlimited Corridor」の体験に関するSNSの投稿文や画像を見ながら展示について回想するSNS回想法を行った.次に,振り返り会の代表的な手法であるKPT法を用いて,今回のVR展示のオペレーションについてKeep(良かったこと),Problem(問題点),Try(試してみること)について順番に書き出し,模造紙上に整理した.

プログラム

5min

ワークショップの趣旨・目的の説明

10min

自己紹介・アイスブレイク(GOOD&NEW)

10min

Unlimited Corridorについての説明

45min

SNS回想法

75min

KPT法

10min

ワークショップのまとめ

5min

アンケート

ワークショップの成果

今回のワークショップを通して、美術館でのVR展示の長所と課題を洗い出すことができた.
長所としては,VR作品は展示会場映えすることやマニュアルを参照することで基本的にはスタッフだけでVR作品を運用することができたこと,VR体験をのためにチケットを購入したお客様の存在などが挙げられた.
一方で,VR展示の課題は,技術レイヤ,スタッフレイヤ,体験者レイヤに分けられることわかった.技術レイヤの課題としては,枯れていない技術を用いているため事前にトラブルを予想することは困難であることなどが挙げられた.スタッフレイヤの課題としては,トラブル対応等では負担が一部のスタッフに偏ってしまうことなどが挙げられた.ユーザレイヤの課題としては,他のお客様が見ている中で,ヘッドマウントディスプレイを身に付けてVR体験をすることを躊躇してしまうお客様が一定する存在することなどが挙げられた.
また,改良案としては,VR機器や操作の簡素化,技術スタッフの増員などが挙げられた。

ふり返り

本ワークショップを通じて,SNSへ投稿された文章や画像を用いたSNS回想法が振り返り会に有効な手法であることがわかった.この手法は写真回想法に着想を得たものであり,参加者の記憶を呼び起こす効果や他の体験者の視点によって議論が活性化することなどが期待される.
また,振り返り会の後半に行ったKPT法によって,SNS回想法によって呼び起こされた記憶をKeep(良かったこと),Problem(問題点)に整理した上でTry(試してみること)を検討することができた.
Tryについては,巡回展の残り会期がわずかだったこともあり,改善案を実際の展示で試すことは叶わなかった.したがって,日程が許せば振り返り会は会期の1/3程度の時点で行うことが望ましいと考えられる.
KPT法については参加者から改善点がいくつか指摘された.一般的なKPT法では,まず各自が思いつく限りのKeepを付箋紙に書き出し,その後一枚ずつ読み上げながら模造紙に関連する項目をグループ化しつつ貼り整理し,「問題点」の書き出しに移るといった工程をTryまで繰り返す.今回は「VR展示に関わるオペレーションについて」という比較的絞ったテーマを設定していたが,VR機材の問題から参加者の心理や地方の美術館でメディアアート展示を行う際の課題など当初予想していたよりも広範囲な議論が展開されたため,Keep,Problem,Tryの対応が分かりづらいとの指摘を頂いた.
そのため,KPT法を用いる際は,Keepの段階でいくつかのレイヤーにテーマを分け,それぞれのレイヤーについてProblem, Tryの工程を行うという運用に変更することが考えられる.
また,ワークショップの時間配分について,前半に行ったSNS回想法が予想以上に盛り上がったことにより想定していた時間を超過してしまったため,時間配分の検討の際は十分余裕をとる必要があると考えられる.

アイテム

模造紙,ポストイット,カラーマーカーペン,PC,レクチャー用スライド,作品に関連するSNSの投稿文および画像,アンケート用紙

開催日時

2019年1月14日

場所

静岡県立美術館

参加者・人数

合計4名 / 開発者1名(大学講師),美術館関係者2名(学芸員,スタッフリーダー),体験者1名(編集者)

講師/ファシリテーター

東京大学 大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 博士課程

原稿執筆:松本啓吾