Get self-awareness with a drawing app

Individuals with autism spectrum disorders (ASD) have difficulty in social interaction, communicating with others, and improving self-understanding. Since there is a limit to the expression of languages, clarifying whether self-expression by drawing can provide awareness of themselves may provide hints for improving self-understanding.

In this workshop, I asked individuals with ASD to draw pictures with a drawing app to see if they could be deepen aware of themselves. Participants are adults who do not draw pictures on a daily basis and are not accustomed to use drawing apps. The purpose was to have them experience interaction with others through their art works and group work and to discover about themselves through the workshop.

They used ibis Paint X to paint with a method called “self-drawing.” After drawing the picture, they wrote “changes in feelings and moods before, during, and after drawing,” “thoughts during drawing,” and “difficulties.” In pair work, they discussed impressions of drawing a picture and explanations of the art work. Next, they explained an art work of each other to everyone. In addition, they wrote out “associative words” from the art work and I asked them to decide the important order of the words and the impression of plus or minus. They wrote down “what I noticed from the associative words” and “what I noticed about my feelings, thoughts, and characteristics” and discussed them with everyone. Finally, we all discussed what we noticed from the opinions of others and what we learned from self-expression.

Eight to 21 associative words were described for each, and some of people had the pluses and minuses were classified in a well-balanced manner, while others had no minuses or pluses, and contrasting results were obtained. What they noticed from the art works and associative words was that “the art work incluses many stuffs I’m so interested recently”, “I can’t lie to the art work. My element is appearing,” “I see myself critically, for better or for worse,” and so on.

As for what they noticed from the art works and opinions of others, there were comments such as “The personality, hobbies, and thoughts of others were well communicated” and “I felt that I could communicate deeper with others than using just words.” It was suggested that the interaction was created through the art works, and that it was noticed by others’ art works and comments and led to discoveries about oneself.

Since the workshop was the first attempt to study my doctoral dissertation, I conducted it with IRB approval of the University of Tokyo (# 21-221).

企画の背景

自閉スペクトラム症(以下、ASD)をもつ人は、社会的相互作用に困難を抱え、他者との関わりが難しく、自己理解が進みにくいことが知られている。そのために就労上のつまずきが生じ、生きづらさを抱えることも多い。言語による自己表現にも限界があることから、非言語的表現である描画による自己表現を行うことで自身に関する気づきが得られるかを明らかにすることは、自己理解促進のヒントを得ることにつながると考えられる。そこで本企画では、アクセスしやすい描画アプリを導入して、自己表現によって自身に関する気づきが得られるかという体験型ワークショップ(以下、WS)を開催することとした。日頃絵を描いていない、ASDの診断を持つ成人を対象に、オンライン上で描画を介した他者との交流も体験していただき、自己に関する気づきや他者との相互作用から何かを発見することを目的とした。なお、本WSは筆者の博士論文の研究の一環として、東京大学倫理審査専門委員会の承認を受けて実施された(#21-221)。

どんなワークショップ?

2日にわたり、各回4人の参加で実施した。自己紹介の後、本WSを行う背景と目的について説明した。アイビスペイントXを用い、試し描きをした後、自分描画法(小山, 2011)を援用して教示に沿って絵を描いてもらった。ワークシートに「描画前・描画中・描画後の気持ちや気分の変化」「描画中に考えたこと」「大変だったところ」を書いてもらい、ペアワークではそれらの感想を作品の説明とともに共有した。次に全体ワークとして、ペアになった相手の描画について説明してもらった。さらに、PAC分析(内藤, 1997)を援用して、絵から「連想語」をあげてもらう個人ワークを実施した。それぞれの連想語に重要度順と、印象としてプラス・マイナス(またはどちらでもない)をつけてもらい、「連想語を見て気づいたこと」「自分の気持ち・考え・特徴について気づいたこと」を書き出し、全体ワークで共有した。最後に、他者の意見から気づいたことを踏まえて全体で議論し、自己表現から得たものについて振り返りを行った。

プログラム

5min

自己紹介

5min

WSの背景・目的の説明

10min

描画アプリの説明・試し描き

30min

自分描画法による描画の実施

5min

感想を書く(個人ワーク)

10min

感想を話し合う(ペアワーク)

10min

休憩

30min

ペアの描画について解説(全体共有)

20min

自身の絵について自由に連想する(個人ワーク)

20min

連想語の結果から気づいたことについて話し合う(全体共有)

20min

WSの振り返り・まとめ

5min

継続調査についてのお知らせ

ワークショップの成果

参加者は、fig.1〜3に示すように「自分描画法」による絵を完成した。また、連想語を検討することによって、以下の結果が得られた。
1) 各人8〜21個の連想語をあげ、プラス・マイナスはバランスよく分類されたものもあれば、マイナスあるいはプラスが全くない例もあり、対照的な結果が得られた。
2) 自身の絵や連想語から気づいたこととしては、「最近の興味が多く出ていた」「絵は嘘をつけない。自分の素が現れている」「良くも悪くも自分を批評的に見ている」といったコメントがあがった。
3) 他者の作品や意見から気づいたこととしては、「他の人の人となりや趣味、考え方が良く伝わってきた」「言葉だけよりも深いコミュニケーションができる」といった意見が寄せられた。絵を媒介に相互作用が生まれ、他者の表現からも気づきを得て、自己に関する発見へとつながることが示唆された。

ふり返り

本WSは、描画アプリを用いた縦断的調査を行う研究のスタートラインに位置づけられており、大変貴重な示唆を得ることができた。ASD者の間で自己表現やグループワークによってどのような相互作用が生まれ、自己に関する気づきが得られるのかといった点に着目する上で、非常に重要な経験ができた。
第一に、絵が不慣れであっても、それぞれの絵に個性がよく現れ、個々の興味関心がどんなところにあるか、自己をどのように見ているかといったことが伝わってきたことは大きな発見であった。描画アプリを使い慣れていなくても、自分描画法の導入により、自己のイメージや気になるもの・こと等を順に描く過程の中で、どんな内的イメージやアイディアが浮かんだのかを視覚化することができた。
第二に、絵という非言語的表現をもとに他者交流が可能となり、それに伴って気づきを得られることが明らかになった。交流は視覚的には絵を通して、聴覚的には対話や議論での声を通してという形態となったが、「言葉だけの時よりも深いコミュニケーションができた」という意見も出たことから、非言語的な自己表現は、相互作用を高めるきっかけとなることが示唆された。また、他者の気づきを受けて、「自分は逆にこういう観点で描いていたことに気づかされた」といった意見も聞くことができた。他者の気づきから自分の描画体験を探索し、自己に関する気づきへと発展することが窺えた。
今後の展望としては、以下を考えている。
1)描画アプリによる自己表現と気づきの深化:今後3ヶ月にわたって継続的に絵による自己表現を行ってもらい、自己の気づきが深められるかを検討する。
2)グループ限定SNSでの作品の公表と鑑賞:作品を定期的にアップロードしてもらい、他者の作品も鑑賞してコメントをやりとりすることで、互いの自己表現をもとにした相互作用を体験してもらう。
3)描画後のインタビューによる体験の検討:インタビューにより、描画体験や他者交流を通して自己理解にどのような変化があったかを明らかにする。自己理解が向上する可能性を見出すことができれば、描画アプリを用いた自己理解促進プログラムの開発へと発展させたい。

アイテム

アイビスペイントX、タッチペン、ワークシート、筆記用具、インターネット環境

開催日時

2021年10月23日、10月24日

場所

Zoom

参加者・人数

合計8名/自閉スペクトラム症(広汎性発達障害、アスペルガー症候群を含む)の診断を持つ成人

講師/ファシリテーター

石川千春(東京大学大学院教育学研究科博士課程2年)

原稿執筆:石川千春(東京大学大学院教育学研究科博士課程2年)