Visualization of healthcare implementation: Drawing images of organizational learning

Even if a particular treatment or form of care has been shown to be effective, it can be an immense challenge for healthcare organizations to ensure that the practice of the treatment or form of care continues and does not disappear. To solve this problem, I held a workshop on the theme of organizational learning for employees who are working in the primary clinic to identify ideas and potential resources for healthcare professionals to continuously implement treatments and forms of care institutionalized by hospitals. Based on the framework of organizational learning, participants shared the roles of staff, teams, and organizations in providing medical care to patients, and identified challenges, ideas, and potential resources for service sustainability. Through pair work involving discussions, participants looked back on treatments and forms of care that could not be continued, and through group work, they drew the implementation of the medical services to be started in the future as organizational learning. Participants were able to conceptualize the phenomenon and grasp the issues and stakeholder relationships within organizations in a multidimensional and objective manner by drawing the implementation of medical care provided by them as organizational learning. Throughout the workshop, participants learned how people, potential resources, and environments influence each other in implementing medical services within the organization in which they work. In addition, the workshop created an opportunity for participants to change their perception and value of their own work and to elucidate the type of actions they will be required to take as a stakeholder in their clinic.

企画の背景

医療者が、病院が導入した治療や看護ケアを継続して患者に提供・実施することは、患者の健康維持や病状の改善などの医療の質保証、ひいては組織の信頼性の獲得の観点からも重要です。しかし、有効性が保証されていた治療やケアであっても、組織が導入した治療やプログラムの半数以上が継続的に実施されずに消退していくという課題があります。

治療やケアを普及・実践するためのモデルやフレームワークは多数開発されていますが、これまでの研究には組織の中のダイナミズムと学習の視点が不足しています。病院における治療・ケアの実践は、組織の中の個人(医療者)・グループ(部署)・組織(病院)の階層の中で互いに相互作用しながら進む組織の学習として捉えることができるます。組織学習の視点を用いることで課題を解決するアイデアを見つけ、治療・ケアの継続につながり、本来その治療やケアによって得られる恩恵を享受できる可能性があります。

しかし、組織学習の視点を用いて医療を提供する当事者である医療者が、自分たちの医療の実装を考えることは行われていません。組織学習の視点を基にしたワークを通して医療の継続を考えることで、自組織における医療の継続的な実施にむけた課題やアイデア、潜在的資源を見つけられる可能性があります。

どんなワークショップ?

医療施設の他部門で働くスタッフに、組織学習の視点を用いて以下の2つのワークを行いました。1)施設が導入した後、継続的に実施できていない治療・ケアについて、ペアワークを通して振り返り、課題・継続のためのアイデアの発見。 2)グループワークを通して、今後導入する医療サービスの実装を描く。

プログラム

15:00-15:10

【Opening】ファシリテーター紹介・WSの目的と流れ、課題と組織学習の説明

15:10-15:20

【Self-introduction】参加者が参加目的を発表

15:20-15:35

【Pari work】継続・定着していない医療実践について、ペアごとにトピックを決めて話し合い(なぜ定着しないのか、何があれば継続できるのか、その資源は今組織にあるのかないのか)

15:35-15:50

【Pari work prsentation】付箋を用いながらプレゼンテーション

15:50-16:00

【Break】

16:00-16:45

【Groupwork】院内で病児保育サービス開始のために個人・チーム・組織に求められることを組織学習のフレームを参考に描く.※ルール:目指すサービス像を設定・文章での記述不可・職種ごとに付箋の色を変える

16:45-17:20

【Group presentation】結果の発表

17:20-17:30

【Survey】アンケート記入

17:30-17:50

【Reflection】個人発表

17:50-18:00

【Wrap up】企画者からワークの目的の再確認、組織学習の活用可能性を説明

ワークショップの成果

【参加者が得たこと】

ワークショップ全体について、全員から「満足した」、「非常に満足した」という感想を得た。また「アイデアの発見ができた」「行動や働き方を変えられそう」という回答もあった。以上より、今回のワークショップの目的は達成したと考える。その他、「管理者として俯瞰的な視点を学ぶ機会になった」、「組織学習のフレームワークを活用してみたい」、「組織として見直さなければいけない点に気が付いた」等の感想があった。ワーク中も、自分の業務だけではなく、部署や組織、ひいては地域社会における自組織の存在意義について多くの発言が聞かれた。多次元的且つ集団の相互作用をもつ組織学習という視点を用いて他部門スタッフとの対話・協同を行ったことで、参加者は医療の継続を広い視野で捉え、サービス継続のための気付きを得たと考える。

【企画者が得たこと】

グループワークでは、あるグループは組織が目指す医療を中心として自組織と社会の関係を取り入れたサービスの実装を描いた。組織学習論上、外部環境は関連要因として重視されていながら、組織学習の知識の活用の過程(サービスの実装の過程)において外部環境を組み入れた組織学習モデルは存在しない。組織の在り方・価値が変化している現代において、情報や知識を創造・活用する当事者たちが組み込まれている文脈は組織学習の創発時とは大きく異なると考えられる。本ワークショップは、従来の組織学習モデルに新たな次元を加える必要性に気が付く良い機会となった。またサービスの継続に向けた取り組みとして、参加者は情報の共有の徹底や毎週のミーテイングだけでは効果がないことに気が付きつつ、自分たちがなぜその医療を行うのか?なぜそのルールのもと実施しているのか?継続させたい治療の根幹を考えていた。いわゆるダブルループ学習が想起されたと言える。本ワークショップでは企画者の狙い通りの経験を提供できたと言える。

ふり返り

【ワーク全体を通して】

■コンテンツについて:実践者が組織学習を知り、自分たちの臨床実践として描く行為は研究領域全体を概観しても初めての試みだったため、企画段階では、臨床で働くスタッフが組織学習という概念を現状の課題に結びつけて考えることは難しいと予想しました。そこで、具体的な事例を取り入れた資料を作成し、l説明する時間を設けました。これにより、参加者が組織学習を自分ごととして意識し、感情的にも良い方向付けをしてワークを始めることができたと考えられます。メインのワークを重視して構成を考えていましたが、今回の経験を通してオープニングコンテンツの重要性も学びました。

■ワークの構成について:企画段階では各ワークの時間を長くもうけていました。先生のアドバイスを参考に、当初より各コンテンツの時間を短く修正しました。参加者からは適切という回答をいただき、「飽きずにできた」「メリハリがあってなかだるみしなかった」という感想がありました。目的のためにより多くのコンテンツを計画していましたが、内容とワーク全体の設計を工夫することで充実したWSを作れることを学びました。

【新たな発見】

対象のクリニックはICTの活用、人材育成、新サービスの開始など他のクリニックと比較しても経営面に注力しているとの事前情報がありました。そのためPDCAサイクルは全スタッフに浸透し、日々改善のための活動を繰り返しているとのことでした。特にオンタイムでの情報共有に注力し、主たる方法としてSlackを使用していました。しかし参加者からは、現行の情報共有方法は、たくさんの情報を効率的に共有できる一方で、情報のインプットとアウトプットが個人レベル・組織レベルで追い付かず、あらたな情報やルールが効果的に活用されていない、業務に反映できていないという意見がありました。、当該組織のようにPDCAを頻繁に回して改善を繰り返している組織ではSNSだけではなく、その他の方法を組み合わせ、組織全体の情報・知識のフローのバランスを維持することで治療継続にも有効な可能性があります。

【今後の展開】

本ワークショップはヘルスケア組織が組織学習行う・活用する第一歩となります。今回は、治療・ケアの継続について多様な視点から気が付くこと・アイデアを得ることをゴールにしました。しかし参加者からは、「気が付いても行動できない」という意見がありました。今回のWSの構成を精錬し、今後はサービス継続に向けた「個人の行動変容」を促すワークを企画していきたいと思います。

【最後に】

テーマの設定・日程調整に際してご協力いただいた東京ビジネスクリニック管理者の皆様、忙しい勤務の中ご参加いただきましたスタッフの皆に心より御礼申し上げます。

アイテム

PC、講義用パワーポイント、ペン、付箋、模造紙、お菓子、ペットボトル飲料

開催日時

2021年11月18日

場所

都内プライマリーケアクリニック

参加者・人数

医師(1名)、看護師(3名)、受付・営業担当者(1名)、システム担当者(1名)/全6名

講師/ファシリテーター

石井馨子(医学系研究科 健康科学・看護学専攻 看護管理学分野 博士課程3年)

原稿執筆:石井馨子