Effective introduction of information and communication technology in schools
Previous studies reported that more than 50% of teachers on sick leave are due to mental health problems. Several reasons underlie the deterioration of the mental health of teachers. One notable reason, however, is that the work of teachers is diverse and complex, and that the work content tends to be conducted by one person.
In recent years, the introduction of information and communication technology (ICT) into schools has been promoted under the GIGA School Concept, which aims to develop a high-speed, large-capacity communication network for each person. Furthermore, it intends to realize education that fosters fair and individually optimized creativity. In this manner, introducing ICT into schools is promoted from the perspective of education for students. Alternatively, however, it represents a significant reform from the perspective of the elimination of the busyness and complexity of the work of teachers.
Therefore, this workshop was held with the objective of examining the introduction of ICT into schools from the perspective of eliminating the busyness and complexity of teachers’ work.
The workshop was scheduled for 3 h. First, the participants shared their experiences. For the next activity, the participants listed and classified two types of teachers’ work, namely, those whose efficiency (1) can and (2) cannot be improved using ICT. For the first group, the participants contributed concrete ideas for ICT, discussed these ideas among themselves, and exchanged opinions to improve each idea.
Five ideas were cited as tasks whose efficiency can be improved using ICT as follows:
① Blackboard: A Combination of a blackboard and a projector; A teachers adds by hand on the image and projects a slide created using PowerPoint on a blackboard or a whiteboard.
② Searching for and making teaching materials: A system that enables teachers to share and search for various resources, such as newspaper articles, dissertations, books, videos, and props.
③ Printing and management of prints: Convert to PDF and preserve using tablets.
④ Simultaneous lecture style lessons: Use zoom and Google Classroom.
⑤ Creating office communication and office documents: Use of calendar applications, such as Google Calendar, or a business management system.
The results of the workshop suggested that the work of teachers is a heavy burden due to the accumulation of small inefficiencies and difficulties.
The participants gained a wealth of opinions, because the other participants were from various training schools. The study made use of the current situation of the busyness and complex work load of teachers and the possibility of solving them using ICT, by providing a direction for future studies.
企画の背景
教師の病気休職者数の5割以上が、メンタルヘルスの不調によるものであると報告されている。教師のメンタルヘルスが悪化する理由は複数あげられるが、1つの理由として、教師の仕事が多様かつ複雑で、さらに1人で抱え込みがちな業務内容であることがあげられる。また、教師が自分自身よりも児童生徒を優先し過ぎてしまうために、教師自身が疲弊してしまうケースが多いと言われている。
近年は「GIGAスクール構想」のもと学校へのICTの導入が進められている。GIGAスクール構想とは、1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを整備し、公正に個別最適化された創造性を育む教育を実現させる構想である。このように、学校へのICTの導入は、児童生徒に対する教育の視点から推進されているが、その一方で、「教師の仕事の多忙化・複雑化の解消」という視点からも、意義のある改革である。そこで本ワークショップでは、学校へのICT導入を「教師の仕事の多忙化・複雑化の解消」という視点から検討することを目的とした。
どんなワークショップ?
ワークショップは3時間のスケジュールで行った。
まず、主催者から挨拶とワークショップの説明を行った。次に、参加者同士の自己紹介を行い、教師を目指したきっかけや、教育実習での担当教科などを共有した。次に、参加者同士で、生徒としての体験の振り返りを行い、出身校の校風や先生達の様子などを思い出しながら共有した。次に、教育実習の大まかな内容の共有や、詳細な業務の振り返りと共有を行った。
参加者同士の体験の共有を行った後、次のワークとして、教育実習の1週間のスケジュールを振り返りながら、「ICT化で効率をあげられる業務」と「ICT化でも効率をあげられない業務」を書き出し、分類する作業を行った。次に、「ICT化で効率をあげられる業務」に関して、具体的なICT化のアイデア作りを行った。次に、参加者同士でアイデアを提案し合い、それぞれのアイデアを磨き上げるための意見交換を行った。
最後に、参加者同士で感想を共有し、主催者からまとめの挨拶をして終了とした。
プログラム
14:00-14:10 | 主催者挨拶 | |
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14:10-14:25 | 自己紹介 | |
14:25-14:40 | 生徒としての体験の共有 | |
14:40-14:55 | 教育実習の大まかな体験の共有 | |
14:55-15:05 | 休憩 | |
15:05-15:25 | 教育実習の詳細な業務の振り返り | |
15:25-15:50 | ICT化できる業務とできない業務の洗い出し | |
15:50-16:00 | 休憩 | |
16:00-16:20 | 業務のICT化のアイデア作り | |
16:20-16:50 | アイデアを磨くための話し合い | |
16:50-16:55 | 感想の共有 | |
16:55-17:00 | まとめ |
ワークショップの成果
ICT化で効率をあげられる業務として、以下の5つが提案された。
①板書:黒板やホワイトボードに、パワポなどで作成したスライドを投影しながら、その映像の上に教師が手書きで追記していくといった、板書とプロジェクターの併用が提案された。
②教材探しや教材作り:新聞記事、論文、書籍、動画、小道具などを、教師の間で共有・検索できるシステムが提案された。
③プリントの印刷と管理: PDF化して、タブレットなどで管理することが提案された。
④一斉講義形式の授業: zoomやgoogle classroomの使用が提案された。
⑤事務連絡や事務的な書類作成: googleカレンダーなどのカレンダーアプリや業務管理システムの使用が提案された。
ふり返り
本ワークショップは、「教師の仕事の多忙化・複雑化」のICTを用いた解消方法を、学生のフレッシュな視点から検討する目的で実施した。ワークショップの成果として、「板書」「教材探しや教材作り」「プリントの印刷と管理」「一斉講義形式の授業」「事務連絡や事務的な書類作成」などにおいて積極的にICT化を検討していくことが重要である可能性が示唆された。
教師の業務において、板書は従来基本的な業務であり、必須の業務であった。しかし、本ワークショプで検討したことで、板書もICT化の余地がある業務であるとの結論が得られた。改善されるべき板書作業の具体例として、教師が黒板上で、プリント、マグネット、大きな三角定規、チョークを駆使して、グラフの書き方を説明したケースがあげられた。そのケースは、体力や授業時間の消費に加え、小道具の準備や使い方の練習なども教師にとって負担になっていると考えられた。一方で、黒板を使わずプロジェクターで投影するだけの授業にしてしまうと、メモを柔軟に追記することや、児童生徒の集中力の維持などが難しくなるといった課題もあげられた。そこで、黒板やホワイトボードに、パワーポイントなどで作成したスライドを投影しながら、その映像の上に教師が手書きでメモなどを追記していくといった、板書とプロジェクターの併用が提案された。
本ワークショップを通して参加者が感じたこととして、「教師の業務は、小さな非効率や負担が積み重なり、大きな負担となっている」ということがあげられた。例えば板書の負担も、それ単体では大きな負担にはならない。しかし教師の業務においては、板書に象徴されるような小さな非効率や負担が多く存在し、結果として大きな負担となっている可能性が、本ワークショップから示唆された。
本ワークショップの参加者は、出身校や教育実習校の様子が多様であったため、ワークショップにおいても豊富な意見が得られた。本ワークショップを通して、教師の多忙化・複雑化の現状と、ICTを用いた解消の可能性を見出すことができたため、これらの知見を今後の研究課題の設定に生かしていきたい。
アイテム | Zoom、パワーポイント、インターネット環境 |
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開催日時 | 2022年2月25日 |
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場所 | Zoomを用いたオンラインワークショップ |
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参加者・人数 | 教育実習を経験した学生:2名 |
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講師/ファシリテーター | 三枝弘幸(東京大学大学院教育学研究科博士課程2年) |
原稿執筆:三枝弘幸(東京大学大学院教育学研究科博士課程2年)