Our Place Story
Place identity of a neighborhood is constructed as an “assemblage” of the values of various places that exist in the community and are recognized by various people. The “Your Place Story” program, which has been conducted since past years, has aimed to develop community archives by asking participants to share a story about a place that is deeply etched in their minds through their personal experiences. This year’s workshop is an expanded version of the previous ones. Participants discussed local place identities that emerge as “assemblages” of individual stories, opinions, and sentiments, and imagined new “stories” that they would like to realize in the future. Using a future design tool newly developed for this workshop that uses cards to set up future scenarios in light of the change of values, the collaborative conceptualization of a future vision for the neighborhood that is considered as desirable as possible even when influenced by external factors that are not necessarily controllable is an experiment in the design of a place value-based urban planning process.
The workshop began with participants going out into the neighborhoods and taking photographs of local streetscapes that touched their hearts. After returning to the workshop venue, participants individually created a collage based on the photographs they had taken and verbalized the local values expressed in the collage using three keywords. Participants who walked through the same area then presented their collages and keywords to each other, and the group as a whole identified the three keywords that they collectively thought represent the value of the neighborhood. Finally, future design tools including “Value Foresight Cards” were introduced, and several alternative future scenarios were set up in which each of the identified values will grow, will be preserved, will be collapsed, or will be transformed to another. From these scenarios, the participants were asked to define one scenario they would like to realize and to propose a space or scene in which they would like to see if this scenario were to be realized. Through activities to think about the values of the neighborhoods by photographing the streetscapes they perceived as valuable and combining them with the perspectives of the other participants, and to select the most desirable future of the neighborhoods out of the scenarios, a methodology of the place-based future design of the neighborhoods was tested.
The group work resulted in the proposal of unique expressions of the neighborhood identities and interesting ideas for achieving a desirable future for those neighborhoods. We would like to further develop the workshop program as tried out this time and incorporate it into the early stages of the process of formulating neighborhood-scale plans or community development visions, aiming to contribute to the realization of urban planning that envisions the better future based on the value of the neighborhood.
企画の背景
地域らしさは、地域のなかに存在し、様々な人に認知されている様々な場所が持つ価値の「集合体」として構築されている。過年度より実施してきた「あなたの名所ものがたり」は、個人的な経験を通じて参加者の内面に深く刻まれたひとつの場所についてのエピソードを語っていただき、コミュニティアーカイブとして残すことを目指してきた。今年度はこれまでの蓄積を発展させ、個人のものがたり・意見・感性の「集合体」として立ち現れる地域らしさについて参加者どうしで議論し、将来的に実現したい新たな「ものがたり」を想像するワークショップとして実施する。今回のワークショップのために新たに開発した、価値の将来的な変容シナリオをカードを用いて設定するフューチャーデザインツールを用いることで、必ずしも望ましくない外部要因によって左右される中でも可能な限り望ましいと考えられる地域の将来像を協働的に構想することは、場所の価値に基づく都市計画策定プロセスのデザインに向けたひとつの試行である。
どんなワークショップ?
ワークショップは、参加者が街へ出て心が動かされた地域の風景を写真に映すことから始まる。会場に戻ったあと、撮影した画像をもとにコラージュを作成し、そのコラージュに表された地域の価値を3つのキーワードで言語化する。続いて同じ地域を歩いた参加者どうしで各自が作成したコラージュとキーワードを発表しあい、グループ全体として地域の価値を3つのキーワードに整理する。最後に、「価値変容カード」を含むフューチャーデザインツールを導入し、設定した価値のそれぞれが向上・維持・減退・変化するオルタナティブな将来シナリオをいくつか設定する。その中から実現したいシナリオをひとつ定め、それが実現した場合の空間やシーンを提案してもらう。価値を感じた風景を写し、他者の視点と組み合わせることで地域の価値について考え、地域の未来を選択する活動を通して、場所の価値から地域の将来シナリオを考える方法論を試行した。
プログラム
13:00-13:05 | 趣旨説明 | |
---|---|---|
13:05-13:15 | 自己紹介 | |
13:15-13:20 | 全体プログラムの説明 | |
13:20-14:10 | 写真撮影(個人作業) | |
14:20-14:55 | コラージュ作成(個人作業) | |
14:55-15:05 | 地域の価値表現の検討(個人作業) | |
15:05-15:15 | 作品共有(グループ作業) | |
15:15-15:30 | 地域の価値表現の検討(グループ作業) | |
15:30-15:45 | 発表:各グループの価値表現 | |
15:55-16:05 | 価値変容カードによるシナリオ設定(グループ作業) | |
16:05-16:15 | シナリオ選択(グループ作業) | |
16:15-16:30 | 発表:各グループの選択シナリオ | |
16:30-16:45 | 振り返りシート記入(個人作業) | |
16:45-17:00 | ラップアップ |
ワークショップの成果
ワークショップでは、2つのグループが目白台・大塚の2地区に分かれてまちを歩き、撮影した写真をもとに作成したコラージュを通じて地域の価値を表すキーワードを考えた。目白台グループは特有の地形に基づく景観的特徴として眼下に新宿や池袋の高層ビル群を「見下ろす」ことができる点や、入り組んだ路地の中で展開される多様な住民の生活などを価値として挙げた。大塚グループは護国寺裏の街並みが急激に変化しつつあることによる新旧の風景の混在や、街の至るところに現れている住民どうしの思いやりの存在などを価値として挙げた。価値の変容シナリオに基づく将来像の構想では、「街並みの変化のスピードをデザインすることで変化の様相を変える」「路地のもつ魅力を活かしながら防災性能を向上させる」といった提案がなされた。
ふり返り
本ワークショップの前半は、地域に点在する様々な場所の価値を「まちを歩いて写真を撮る」という活動を通して捉え、コラージュを作成する過程で地域全体としての「地域らしさ」を3つの価値という形で言語化し、それを他の参加者と共有することを通して、人々によって集合的に感じられる地域の価値をまとめあげるという流れで実施した。コラージュの作成は、初めて行う参加者にとっては難しいかと思われたが、感想として「他者との話し合いを通じて、自分が言語化することができなかった地域の価値についても言語化して捉えられた」といった意見が出た。多くの写真をいくつかのキーワードにまとめていく作業と、他者の感じ方に触れるという体験によって、地域に対する自らの感覚を改めて整理する機会になったのではないかと考えられる。また、ワークショップの後半では、価値変容カードを引いて設定された3つの将来シナリオから1つを選び、そのシナリオが実現した際の将来像を考えた。各グループが引いた将来シナリオは、設定した価値の多くに減退や変化を強いるものとなり、いずれのグループでも、その中で望ましい将来像を描くことに苦労した様子が見られた。今回は価値の向上・維持・減退・変化という4種類のカードを同数ずつ用意したため、減衰や変化が引かれやすい状況となっていた。カードの枚数を調整することでグループワークの難易度をコントロールする必要性を感じた。例えば、短期的な将来像を描くことを目的としたワークショップでは維持の枚数を増やし、長期的な将来像を描くことを目的としたワークショップでは逆に変化の枚数を増やすといった応用が考えられる。また、価値の変化の内容の検討が特に難しかったとの意見が寄せられたことから、価値の変化カードを引いた場合の新たな価値を選ぶ価値カードの導入なども検討したい。しかしながら、今回のワークショップでも、参加者どうしの議論により「街並みの変化のスピードをデザインすることで変化の様相を変える」「路地のもつ魅力を活かしながら防災性能を向上させる」といった興味深いアイデアが引き出された。今回試行したようなワークショッププログラムをより発展させ、地区スケールの都市計画あるいはまちづくり構想等の策定プロセスの初期段階に位置づけることによって、地域の場所の価値に基づいて将来像を構想する都市計画の実現に寄与することを目指していきたい。
アイテム | モバイルWi-Fi、スクリーン、プロジェクター、iPad mini、スマートフォン、フォトプリンター、写真用紙、画版、画用紙(四つ切)、ワークシート(対象エリアの地図、価値表現の検討用個人/グループ作業シート、将来シナリオ設定用グループ作業シート、振り返りシート)、ホワイトボード、価値変容カード、マグネットシート、ホワイトボードマーカー、油性マーカー、ボールペン、蛍光ペン、はさみ、色鉛筆、消しゴム、両面テープ |
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開催日時 | 2022年3月13日 |
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場所 | アカデミー音羽 |
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参加者・人数 | 合計9名/都市工学2名、市民3名、ファシリテーター2名、撮影担当2名 |
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講師/ファシリテーター | 真鍋陸太郎(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 助教) |
原稿執筆:井上拓央(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 博士課程)