Practical Applications for Parental Emotion Monitoring Apps

It has been shown that parents of children with developmental disabilities have high levels of stress and are more likely to arouse anger due to a sense of inability to cope with the child’s problematic behavior. Feelings of anger are particularly likely to lead to excessive reprimand and corporal punishment of children in parenting. Anger can lead to severe reprimands and corporal punishment of children (Nakatani, 2015, 2016), and even minor reprimands can cause strong fear and traumatization for children with sensory sensitivity characteristics (Shimizu, 2015; Hayashi, Egawa, & Someya, 2015). In other words, emotional control of anger is an important issue for parents of children with developmental disabilities.

The purpose of this workshop is to understand the mechanism of the effect of the parental emotion monitoring application ”Jibunn Navi” developed by the implementer and to obtain suggestions for modification of the application. The purpose of “Jibunn navi” is to help parents deepen their self-understanding of their own anger and learn to control it, especially from a cognitive perspective. In addition, it is assumed that the program will be used in parallel with programs such as “parent training (PT)” and “parent programs,” which aim to “maintain and establish skills for coping with children’s problem behaviors” in supporting parents of children with developmental disabilities.

Each session was conducted with about 7 to 8 mothers of children with developmental disabilities. The participants in this workshop were members who had agreed to participate in the intervention study using the developed application, and we invited them to participate in the workshop by informing them that we would hold a briefing session on the use of the application. Each session lasted about one hour and was conducted online using Zoom. On the day of the workshop, the workshop organizers and co-researchers first introduced themselves and thanked the participants for their cooperation. The first half of the session was a psychoeducational session on “Cognitive Anger Control,” the theme of the application. In the first half, the theme of the application, “Cognitive Anger Control,” was explained as a psychoeducational session. Then, in the second half, the actual screen of the application was shared and “how to use the application” was explained. This was followed by a question-and-answer period.

企画の背景

発達障害児を持つ親はストレスが高く,子どもの問題行動への対処不能感を抱くことで怒りを喚起しやすいことが示されている。怒りは,子どもへの厳しい養育態度につながりやすく(中谷, 2015, 2016),些細な叱責でも,感覚過敏の特徴を持つ子どもにとっては,強い恐怖を感じトラウマ化する恐れがある(清水,2015; 林・江川・染矢,2015)。すなわち,発達障害児の親にとって怒りのコントロールは重要な課題であると考えられる。
本ワークショップでは,実施者が開発を行った親の感情モニタリング・アプリケーション「自分ナビ」の効果の機序と,アプリケーションの修正に向けた示唆を得ることを目的とする。「自分ナビ」は,親自身が自分の怒りについて自己理解を深め,特に認知的な観点からコントロールできるようになることを目的とするものである。また,使用に際しては,発達障害児の親支援において「子どもの問題行動への対処スキルの維持・定着」を目指す「ペアレント・トレーニング(parent training:以下PT) 」や「ペアレント・プログラム」などのプログラムと並行して使用することを前提とする。

どんなワークショップ?

各回とも,小学生以下の発達障害児の子どもを持つ母親7~8名程度を対象に実施した。本WS参加者は,開発アプリを用いた介入研究への参加に同意しているメンバーであり,アプリ使用に当たっての説明会を実施する旨を伝えてWS参加を呼び掛けた。いずれも1時間程度で,Zoomを用いてオンライン上で実施した。当日は,まずWS実施者や共同研究者から自己紹介をし,参加協力へのお礼を述べた。その後の進行は大別し2つのパートに分かれ,前半では心理教育として,アプリのテーマである「認知的な怒りのコントロール」について説明した。この中で個人ワークの時間を設け,自分の怒りのパターンや怒りを和らげるパターンを考える時間を設けた。その上で,後半では実際のアプリ画面を共有しながら「アプリの使い方」について説明を行った。その後,質疑応答の時間を設けた。また,WS終了後,介入を行い,介入を終えてみての感想やアプリの改善点についてはアンケートにて聴取を行った。

プログラム

10:00~10:10

主催者挨拶:主催者及び共同研究者からの挨拶

10:10~10:20

心理教育:気持ちのモニタリングの重要性について

10:20~10:30

心理教育:認知的な怒りのコントロールについて

 ① 怒りがわく「考え方」
 ② 怒りが和らぐ「視点」

10:30~10:45

心理教育:アプリの使い方紹介:アプリ画面を見せながら操作法について説明する。

10:45~11:00

質疑応答・まとめ

ワークショップの成果

本WSは,介入(アプリ使用)前段階の心理教育として位置付けた。成果としては,第一に,本WSを準備する中で,介入(アプリ使用)前に参加者に伝えるべき心理教育内容が示された点である。心理教育内容として,アプリのテーマである「認知的な怒りのコントロール」について説明した上で,「アプリの使い方」について画面共有しながら説明を行い,疑問点についてもその場で解決するようにした。上記説明内容や流れは,親支援専門の心理職や,当事者の親からの意見をもとに修正を加えながら考案したため,より当事者に必要な情報を漏らさず簡潔に伝える工夫ができたと考えられる。第二に,使用後のアンケートから,介入の流れやアプリ自体へのいい点・改善点が示されたことである。具体的には,いい点としては,アプリ使用を通し,自分の怒りを含めた感情の生起や低減のパターンへの意識が高まったことや,生身の心理士や同じグループの親から自身の記録へのFBがつくことが励みになったことなどが示された。一方で,改善案としては,記録の手間や,チャット形式でのコメント機能,通知機能等の要望があがった。

ふり返り

感想を以下2点述べたい。
①介入前の心理教育の重要性を実感した。本WSは,介入(アプリ使用)前段階の心理教育として位置付けた。アプリ使用の形式の介入では,脱落者が多いことが限界として述べられているが,今回WS実施後のアプリ使用では,参加者17人全員が,3週間の介入期間中複数回の使用を行うなど,脱落者は見られなかった。このことから,介入のへの動機づけを高めるためにもアプリ使用の事前に心理教育を実施することは重要であると考えられる。本WSでは,心理教育内容として,アプリのテーマである「認知的な怒りのコントロール・セルフモニタリングの重要性」について説明し,「アプリの使い方」についても,その場で実際のアプリ画面を共有しながら説明を行った。また,質疑に応じて疑問点をその場で解決するようにした。これらのプロセスを踏むことで,使用へのモチベーション向上や,使い方のイメージを作ることができた可能性が考えられる。
② 今後の展望として,心理教育,アプリ自体に関する更なる改善が必要と考えられる。心理教育については,今回WS実施を経て,精査すべき点が見えた。例えば,介入期間中に,「使い方がよく分からない」と問い合わせを貰った機能についての説明を,心理教育時により丁寧に示す必要が考えられる。また,アプリ自体のユーザビリティ向上のために追加すべき機能が明らかにされた。例えば本アプリには,使用者同士のコメントの機能があるが,コメント時の通知機能が搭載されておらず,それを望む声が複数挙げられた。また記録の手間についての意見も多く,これらを改修時に含める必要があるだろう。

アイテム

Zoom、パワーポイント、インターネット環境

開催日時

1回目:2022年1月10日
2回目:2022年2月11日
※同一の内容を2回実施

場所

オンライン

参加者・人数

1回目参加者:2歳~6歳の発達障害児の母親7名
2回目参加者:同8名

講師/ファシリテーター

高堰仁美(東京大学教育学研究科 博士課程2年)

原稿執筆:高堰仁美