Self-Image Design Workshop
In this workshop which was held in May 2014, all participants introduced themselves to each other. The global spread of digital cameras has brought about deep changes in people’s consciousness of their self-image. As social networking services develop, this goes without saying. In this workshop, participants discussed four different self-images: ‘ID card self images,’ ‘favorite self-portraits,’ ‘photos shot by friends,’ and ‘least favorite self-portraits.’ Dr. Hiroshi Harashima who is a former president of the Japanese Academy of Facial Studies participated in this seminar, too. In the final part, he gave an in-depth lecture and provided listeners with very useful suggestions.
企画の背景
このワークショップでは、普段何気なく撮影する自己の写真について、シチュエーション別に4種類を撮影し、参加者同士で互いに感想を言いあうことによって、「自己イメージとは何か?」というテーマに迫っていくよう、ワークショップの流れを構成した。 「自己イメージ」と一言でいってもそこには様々な様相があり、最終的に「自分という人間は、周囲にこのように見られたい」という思いも反映されたものが流通することになる。今回のワークショップではそのことと共に、他者が持つイメージは必ずしも自己イメージとは一致しないこともある、ということも併せて認識することとなった。
この背景には、人と社会が直接繋がるネットワーク時代における「セルフイメージ」という問題がある。自分はどのように見られたいのか?実際には他人の目には自分はどういうイメージで受け取られているのか?そういったことを探るために、「セルフポートレート」というモチーフを取り扱った。
どんなワークショップ?
下記の4種類の「セルフポートレート」をスクリーンに投影しながら、参加者全員でコメントを述べ合うというハンズオン*を行った。
a. 身分証明書の写真
b. 自分で撮影した気に入った写真
c. 他の人が撮影した「他の人から見た、私らしい」写真
d. 自分で撮影した、他人に見られたくない写真
複数種のセルフイメージと向き合うことで、それらの違いを認識してみるワークショップとなっている。
想定していたことではあったが、d の「他人に見られたくない自分」の発表は、自分の見た目のコンプレックスなどを晒すことになるので、参加者にとってはつらい経験であったようだ。また、c の「他人から見た私らしい」写真というのは、往々にして本人の自己イメージとずれていることが多いが、そのギャップ自体を知ることが、今回のワークショップの一つの目的となっている。
* ハンズオン:自分の手で何かの作業を行いながら、物事を理解したり表現したりすること。ワークショップのメインの活動となる
プログラム
15min | イントロダクション:自己イメージの定義 | |
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10min | 本WS のゴールと流れの確認 | |
5min | 必要なツール類(携帯、タブレット、パソコン)の説明とメールアドレスの登録 | |
25min | ハンズオン1:身分証明書写真の投稿。 | |
45min | ハンズオン2:自分のお気に入り写真の投稿。 | |
45min | ハンズオン3:他の人に撮影してもらって投稿。 | |
45min | ハンズオン4:気に入らない自分の写真の投稿。 | |
30min | ゲストからのコメント | |
20min | 全体の感想の共有とまとめ |
ワークショップの成果
最終的にすべての写真を見終わった後に感想を述べてもらったが、「他人から見た自分のイメージが自己イメージと一致しなくて驚いた」「他人から見た目に関して褒められるのは素直に嬉しい」「自分が嫌いな自己イメージを人に見せる行為が衝撃だった」といった感想が共有された。
テーマとして設定されていた「自己イメージ」について、内面または外面から多層的に捉える視点を得られた。また、アンケートにおいて「自身がワークショップ・デザインをするにあたり、参考になる部分はありましたか?(5段階評価)」という質問に対しては「平均点4.2」という値であったため、ワークショップ・デザインについても理解を深めることができたのではないか、と推察される。
ふり返り
ワークショップは概ね意図通りに進行できた。一方で、考察するポイントとして「他人に見られたくないイメージ」について、想定していた以上に参加者にとっては重い課題だったように見受けられた。実はこの課題は、4つの課題のうち3番目に置くことも考えられたが、ワークショップ・デザインの観点から述べると「他人からのイメージ」と「見られたくないイメージ」の後のディスカッションが重要であり、この二つのディスカッションを通して、自分のイメージと自分の意識にどのように差があるのかを理解することを狙いとしたかった。今回のワークショップ参加者は互いに面識がなかったため、初対面同士で自己イメージを講評することへの畏れが大きくなってしまうことが想定されたので、今回はこの順序で進行した。しかし、すでに参加者同士の関係性が確立されていれば、「他人からのイメージ」と「見られたくないイメージ」の順序を入れ替えて実施できる可能性もある。その場合、ワークショップ全体の印象も少し変化することだろう。
教育効果の観点から一つの反省としては、当初予定していた「メタリフレクション」を行なう時間がとれなかったことがある。メタリフレクションは、ワークショップのプログラム全体が終了した後に、事前に準備されたワークショップ進行表を見ながら、「このワークショップがどのような構造になっていたか」を振り返るものである。これを行なうことで、どのような意図のもとにハンズオンの時間が構成されていたのか、実施直後にふり返ることになるため「参加当事者としての経験」を「ワークショップ・デザイナーとしての視点」で観察することができ、特にワークショップデザインを学ぶ学生にとっては有益な要素である。
今回は、開催直前にレクチャーを挿入したためにメタリフレクションの時間をとれなかったが、一方で、レクチャーからは非常に貴重な話題や視点が提供され、ワークショップに厚みを加えるものとなった。
アイテム | 写真が撮影できる携帯電話 |
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開催日時 | 2014.5.17(土)13:00-17:00 |
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場所 | 東京大学本郷キャンパス工学部2号館9F92B 教室 |
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参加者・人数 | 参加人数:12名 |
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講師/ファシリテーター | 会田大也(東京大学大学院GCL GDWS 特任助教) |
原稿執筆:会田大也