Monitoring Emotion Using Smartphones:Usability in Clinical Settings
In recent years, researchers have developed effective research methods using ICT, such as the experience sampling method (ESM). The main purpose of this workshop was to make a proposal about how we could make use of ESM in clinical settings targeting people with difficulties in emotion regulation. Prior to the workshop, participants experienced ESM procedures by monitoring their daily emotion regulation experiences themselves . During the workshop, participants first learned basic knowledge about ESM and emotion regulation. After that, participants were divided into two groups, and discussed approaches to make use of ESM in clinical settings. As a result, the two groups came up with ideas regarding the use of ESM in clinical settings. Both groups mentioned the importance of data feedback and data-based reflection/discussion with a professional therapist. These ideas have implications for developing a more sophisticated approach to make use of ESM in interventions targeting difficulties in emotion regulation.
企画の背景
感情を適切にコントロール(制御)し、環境に適応していくことはメンタルヘルスを維持する上で重要なテーマである。我々は日常生活の中で、考え方を変えたり、気晴らしをしたり、気持ちを受け入れたりなど、様々な方法で感情に対応しているが、これらの具体的な方法は感情制御方略と呼ばれる。現在、企画者は日常生活において人々が使用する感情制御方略と精神的健康や気分との関連を検討することを目的に、スマートフォンを介したモニタリング調査の実施を進めている。
このように、日常生活を送っている調査対象者に対し、一定期間にわたって1日数回、定刻もしくはランダムな時刻に回答を求める研究手法は「経験サンプリング法(ESM)」と呼ばれる。スマートフォンを用いたESMは研究法として用いられているだけではなく、感情・思考・行動パターンへの自己認識を高める可能性のある介入法としても注目されている。そこで、本ワークショップでは参加者に実際にスマートフォンを用いたESMを体験していただいた上で、感情制御の難しさを示す方々への支援に向けてこの方法をどのように活用できるかについて検討することを目的とする。
どんなワークショップ?
本ワークショップでは、事前に参加者にスマトフォンによる経験サンプリング(ESM)という研究法を実際に数日から1週間のあいだ体験してもらった。具体的には、1日5回、メール配信による通知が参加者のスマートフォンに届き、その都度参加者は、(1)使用した感情制御方略、(2)通知時の気分状態、(3)環境のコントロール可能性、について回答を行った。このような経験を前提に、ワークショップではまず感情制御が困難な人のイメージや、使用したツールの使用感について議論してもらった。続いて、活用可能性を検討してもらうための準備として、まずは感情制御研究やESMを活用した研究の現状についてレクチャーを実施した。その上でワークショップの課題として、このようなツールの臨床現場における活用可能性について検討してもらった。本ワークショップの参加者の多くは臨床現場で専門家として経験を積んでいるため、その経験を踏まえて課題に取り組んでもらうよう求めた。
プログラム
10min | ワークショップ趣旨確認 | |
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10min | アンケートへの回答 | |
20min | 自己紹介を兼ねたアイスブレイク | |
40min | 「経験サンプリング法」や感情制御研究に関する説明 | |
(休憩) | ||
40min | ウォームアップ・ディスカッション | |
(休憩) | ||
60min | 体験した経験サンプリングの使用感・改善点のデ ィスカッション | |
20min | 各グループがディスカッションの成果を発表・全 体で議論 | |
10min | 全体での感想 | |
10min | 企画者によるまとめ |
ワークショップの成果
まず、参加者に体験してもらったESMの使用感については、(1)自分について普段客観的に振り返っていないことに気づいたこと、(2)自分の普段使用している感情制御パターンに気づいたことなど、ESMの使用を経た気づきが挙げられた一方で、(1)「状況」や「出来事」に比して「感情」が捉えにくいこと、(2)普段気分や感情制御についてあまり意識していないため思い出すのが大変だったことなど、ESM使用の難しさも挙げられた。
続いて、ESMの臨床現場における活用可能性の検討では、ESMの利点と欠点を考慮しながら実際の活用方法についてグループごとに議論し、ESMの臨床現場における具体的な活用イメージについて発表を行った。このプロセスを通して、ESMの持つ利点だけではなく、いくつかの限界点についても明らかになり、その限界点を補うようなアプローチについても理解を深めることができた。詳細は以下の省察にて考察する。
ふり返り
本ワークショップを通じて、臨床現場におけるESMの活用可能性についていくつかの活用イメージが提案された。主要なアイディアとして、(1)メール配信によるESMでは過去の回答履歴を参照できないため、自らの感情制御パターンへの理解を促進するためにデータに基づいたフィードバックを使用者に対して実施すること、(2)回答が困難である状況も十分に考えられるため、通知型ではなく自分のタイミングでアクセスするアクセス型とすること、(3)より具体的な感情制御パターンを把握するために、感情の生起に関わった出来事・状況についても具体的なデータを蓄積すること、(4)日中の反復回答が困難と考えられるため、日中はウェアラブルデバイスで気分状態についてのみ回答し、夜間にそれ以外の詳細情報についてスマートフォンを用いて回答すること、などが挙げられた。また、蓄積データを感情制御支援に有効活用するためにも、取得データに基づいた専門家とのふり返りや話し合いが重要であることがどちらのグループにおいても述べられた。
以上のディスカッションを通して、一般的な経験サンプリング法(ESM)のみでは複数の限界点があることが示唆されたが、それらの限界点をカバーすることで臨床現場においてESMが有効活用できる可能性が考えられた。本ワークショップでは参加者がESMを事前に体験していたため、ESMの一般的知識だけではなく、実体験に基づいたアイディアが提案されており、この点は本ワークショップのポジティブな点であると考えられる。一方、ワークショップの進め方に関する反省点としては、説明やディスカッションの時間配分が挙げられる。本ワークショップの目的はあくまでもESMの臨床現場における活用イメージを提案することであったが、導入ディスカッションに時間をかけすぎてしまい、後半の提案に関する発表・議論にあまり時間を割けなかった。アイスブレイクや導入のディスカッションはあくまでワークショップの目的を達成するためのプロセスであるため、そのことを意識し、もう少しうまくタイムマネージメントできればより良かったと感じた。
アイテム | 模造紙、付せん紙、マーカー、色鉛筆、クレヨン、PC |
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開催日時 | 2017.11.19(日) |
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場所 | 東京大学弥生キャンパス 演習室 |
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参加者・人数 | 5名 |
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講師/ファシリテーター | 浦野由平(東京大学大学院教育学研究科 博士課程) |
原稿執筆:浦野由平